月日、空を飾る

□行きつけの花屋さん
1ページ/4ページ



「局長さん。頼まれていた客間のお花なのですが、行きつけのお花屋の店長さんが届けてくださるそうなのです。
よろしかったですか?」


「ああ、かまわないよ。門番に伝えておこう、何時くらいだい?」


「ありがとうございます。お昼の2時頃に、伺いたいとおっしゃっていました。」


「よし、わかった。」


次の日、遅めの昼食を食堂で食べていた近藤は総悟と土方にその話をしていた。


「いやぁ、花屋は翡翠ちゃんに選んでもらってたからなぁ。
店長には初めて会うよ。」


「おいおい、初対面の人間を屯所内に入れるつもりかよ。」


「今更、何言ってんですかィ。俺らは常日頃から初対面の人間だったり、顔と名前くらいしか知らない相手を屯所に入れてるでしょーに。」


「それは、しょっぴいた相手だ。」


「大丈夫だよ。翡翠ちゃんが選んだ店だ。きっと、花を愛する優しい人に違いない。
頭にお花の簪とかつけちゃったりしてさっ!」


「どーだかな。」


うふふ。なんて笑いながら近藤が妄想を膨らませていると、ドタドタと足音の後に勢いよく障子が開く。


「きょっ局長ォオオ!!」


食堂に駆け込んできたのは山崎。冷や汗ダラダラな様子に、土方は片眉を上げた。


「なんだ騒がしい。今、飯中だぞ。」


「どうした?山崎。」


「あ、あぁあの…翡翠ちゃんが言ってた、花屋の店長が…。」


「おっもう来られたのか!挨拶せんとな。お前らも来い。」


「あっ局ちょ…!」


食堂を出た三人は、門に向かうべく廊下を歩く。曲がり角を曲がると、翡翠が店長らしき人物を連れて歩いていた。


「いやぁ、店長さん。わざわざすみませんね…え…?」


「まあ、皆様お揃いで。ちょうどよかったですの。
こちらがかぶき町で花屋を営んでいらっしゃる…

屁怒絽さんです。」


「どうもはじめまして。屁怒絽です。
こちらこそ、お忙しい中局長さん自らご挨拶に迎えてくださるとは。」


「「「………。」」」


「屁怒絽さんは、万事屋さんのお隣りさんなんですの。」


「ええ、皆さんほんといい方で。」


緑色の肌をした大きな体に、ズボンとエプロンのみという花屋とは思えないワイルドさ。

さらには、大きな口に鋭い牙。恐ろしい顔に似合わず、ピンク色の花が頭の上で風に揺れている。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ