月日、空を飾る

□義賊気取りの変態泥棒
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夜、不意に目を覚ました翡翠は厠の帰りに廊下を歩いていた。
キシリと軋んだ音に目を向ければ、赤い褌を顔に巻いたブリーフの男。
さらには唐草模様の風呂敷を担いだ姿に、翡翠は眠気眼を擦る。


「…あの…お寒くはありませんか?」


男は何も言わず。慌てたように塀を飛び越えて去っていく姿をぼんやりと眺めていた翡翠は、何事もなかったように部屋に戻って布団に入ったのだった。

そして翌日―…


「あら…?下着が無い。」


下着類は部屋で干していた翡翠は、今朝になって干していた下着が無いことに気付いた。
もしや片付けたかと箪笥を探しても、見当たらない。

一方、目を覚ました総悟の枕元には一枚のパンツが無造作に置かれていた。


「…は?」


白地に薄紫の刺繍が施されたパンツに、総悟は自分の持つ記憶を引き出してある答えに行き着く。

慌てて着替えて居間に行けば、ちょうどニュースが流れていた。

ニュースキャスターが原稿を読み上げる。

"怪盗フンドシ仮面が脱獄した"と。


「沖田隊長!大変です!」


総悟の姿を発見したお蘭が駆け寄るも、不機嫌全開で振り返る。


「ああ゙?俺は今それどころじゃ…」


「いいから!」


ごにょごにょと耳打ちされた内容に、総悟は目を剥いた。


「な…っ下着が盗まれた!?」


「今朝、起きた時に気付いたらしくて…多分フンドシ仮面の仕業じゃないかと。」


「っの変態野郎…!」


お蘭からの情報に、総悟は急いで食堂に向かって仕事中の翡翠を連れ出す。
周りに誰もいないことを確認して、口を開いた。


「仕事中すまねェ。柏木から聞いたんだが…その、下着が盗まれたって…?」


「え?あの、盗まれたかどうかは…ただ夕べ部屋に干していた下着が今朝になって見当たらなくて…。」


「前に、下着泥棒で騒がれていた男が脱獄したらしいんでィ。多分そいつの仕業でィ。」


「まあ、下着の泥棒さんが…。」


「あ―…その、聞きづらいんだが…どんな下着だったか、覚えてるかィ?」


「どんな…?」


「色とか、その、取り返さなきゃならねぇし…。」


「大丈夫ですよ。また買いますし。」


「俺は大丈夫じゃねェんでィ!」


「総悟さんが?」


「じ、自分の女の下着が男に盗まれたなんざ許せねェだろィ…!」


「ありがとうございます。嬉しいです。」



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