月日、空を飾る

□無意識ハニー
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「ごほっごほ…っ。」


「まさか、総悟が風邪を引くとはなぁ…。」


現在自室で咳込んでいる総悟に、近藤は腕を組んでため息をついた。
その傍らで、翡翠は申し訳なさそうに俯いている。


「申し訳ございません…。私が無茶をしたばかりに…。」


昨日、庭の木から降りられなくなった野良猫を見つけた翡翠が梯子で救出しようとした際。
たまたま、総悟が見掛けたのが始まりである。

当然危ないと総悟は止めに入った。


"翡翠っ何やってんでィ!危ねェだろィ!早く降りろィ!"


"大丈夫ですの。大人しい猫さんですし。"


大人しい気性でありながら、やることは時に大胆。バランスを崩すことなく木に登れたのはいいが、抱き寄せた途端。
腕の中から逃げ出した猫の体は、宙に。

下には池があった。慌てて掴もうと体を乗り出した翡翠により、梯子も傾く。


"きゃ…!?"


"翡翠!!"


総悟は落下地点である池に入り、翡翠の体を肩で担ぐように受け止めた。
しかし勢いと足場の悪さから、そのまま尻餅をついてしまったのだ。
翡翠自身が濡れたのは足や飛沫によるもののみだが、総悟はほぼ全身が水に浸かってしまう。
元々軽い鼻風邪だった総悟は、運悪くこじらせたのであった。

ちなみにあの時の猫は状況を察した虎子が救出したが、相手は野良猫。
虎子に驚いてあっという間に逃げて行ったという、無情な結果に終わったのである。



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