弐
□友達のことだと相談するのは、たいてい自分のこと。
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適当な団員に頼みたいが、代物は玖珠呪族が作った薬だ。
裏のオークションにでも出品すれば、傷薬だろうが破格の値がつくだろう。
下手に頼んで横流しされては第七師団の信用に関わるからと、阿伏兎の判断により結局、神威をボディーガードにスー(フォロー役)が行くことになった。
(阿伏兎さん…今のうちに、溜まった仕事を片付けるつもりなんだろうな。)
一般の宇宙船で指定された星までの航路、何だか厄介者扱いされたような気持ちになる。
もちろん阿伏兎がそんなつもりではなく、ただ仕事に追われているからだということはわかっているが。
見慣れた星の海を窓から眺めていた神威は飽きたのか、鞄の中から持参した蒸しケーキを頬張る。
スーお手製の蒸しケーキはチョコ、あずき抹茶、さつまいも等。味のバリエーションに富んでいる。
パクリパクリと、わんこそばのような勢いで食べる神威にスーは声を掛けた。
「全部食べちゃ駄目ですよ?夜食用に持ってきたんですからね。」
「はいは―い。たかが薬を渡すのに、めんどくさい行き方だね。
そんなに、ハゲてることを隠したいみたいだよ。」
「頭皮の状態とか、確認したかったのですが仕方ないです。
一応血液から体質に合うものを想定しましたが、完璧な自信がない分屈辱的ですよ。」
「ああ、それで機嫌悪いんだ?」
「え、顔に出てますか?」
「それもあるけど、スーってイライラしてると唇噛むの癖みたいだし。
俺が噛んであげようか?」
「っ!?遠慮します!」
神威は口周りについた食べカスをぺろりと舐め、座った席から顔を寄せる。
すると真っ赤になったスーに、神威は楽しそうにケラケラと笑った。