弐
□自分で撒いた種は、自分でなんとかすべし。
2ページ/7ページ
(…何で、幼児化してんだ?まさか、団長の隠し子…とかじゃねーだろうな?)
絶対に違うと、断言できないのはスーに会うまでの女グセの悪さが原因である。
(笑えねぇぞ。もし、隠し子だったら大問題だ。)
脳裏に過ぎるのは、絶対零度の眼差しで微笑む薬師の娘。
その逆鱗に触れたら、集団毒殺事件になりかねない。
「…おい、お前さんの名前は?」
「人に名前を尋ねる時は、先に名乗りなよ。」
「腹立つくらい、生意気だなボク?俺は阿伏兎だ。」
「俺は神威だよ。」
「………。」
その頃、スーはキッチンでご馳走を作っていた。
なんだかんだ最近、仕事ばかりでろくに側にいられず。
お詫びとして、料理を作り続けて早二時間。
特大ケーキも完成し、残すはテーブルのセッティングだけとなった。
「神威さん、喜んでくださるかなぁ…!」
スーは、ニヤつく顔を抑え切れず。神威が来るのが待ち遠しい。
そんな上機嫌の中。バタバタと騒がしい廊下に目を向ければ、阿伏兎が飛び込んできた。
開いた扉の風圧で、皿に高々と盛りつけた唐揚げが崩れるのてはないかと無意識に手を伸ばす。
幸いにも崩れ落ちなかった唐揚げにホッと一息つくと、阿伏兎へ困ったような眼差しを向けた。
「…阿伏兎さん。この盛り付け、微妙なバランスで保ってるんですから。気をつけてください。」
「わ、悪い…。だが、こっちも訳ありなんだよ。」
「うわぁーっおいしそー!」
「?阿伏兎さん、その子供…。」
「実は―…。」
阿伏兎の説明の中、チビ神威はもりもりと料理を平らげる。
振り返った先にある、空の皿を見たスーが叫んだのは言うまでもない。