□馬鹿と天才は、紙一重だった。【前編】
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銀時は上機嫌で街を歩いていた。

理由は今朝の新聞受けにケーキ屋のサービス券が入っていたのからである。

しかもかなりの有名店で味も最高らしいが、値段はなかなか手が出せない。

一度は食べたかった銀時の胸の内を知るかのような出来事。

【お好きなケーキとドリンク無料券】。銀時はそれを大事に財布にしまって店へとたどり着いた。

高級感のあるベルの音が一番に自分を迎えてくれる。
次にレトロなウエートレスの姿をした店員が、上品な笑顔を浮かべて迎えてくれた。


「いらっしゃいませ。」


「あ、すんません。このサービス券、使いたいんですけど。」


「はい。坂田銀時様でいらっしゃいますね。
こちらへどうぞ。」


「あれ?何でお姉さん、俺の名前知ってんの?」


「坂田銀時様でいらっしゃいますね。こちらへどうぞ。」


「あれ?お姉さん、焦点合ってなくない?」


何故か焦点が定まっていないウエートレスに、陽気な気分は冷める。
その不気味な店員に案内されたのは、店内ではなく関係者以外立入禁止の区域だった。
アンティークな椅子とテーブルが、自分を待っていたのではないかと銀時はさらに不安になる。


「あの、お姉さん?俺、バイトの面接に来たとかじゃないんだけど…?」


「坂田銀時様でいらっしゃいますね。こちらへどうぞ。」


何を尋ねても相手はワンパターンな返事を返した。
もしかするとやばい店なのかと考えているうちに応接室の前に到着する。

扉の先にいたのは、サングラスをかけた男ではなく―…


「お久しぶりですね。坂田銀時さん?」


長い黒髪を靡かせた見目麗しい女だった。


「チェェンジィイイ!!」


「どこぞの風俗店と、一緒にしないでください。
張り倒しますよ。」



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