「春なのに…、なんでこんなに寒いんだっ。」
久しぶりのテルとのデートのために新調した、小花柄のワンピースが風に踊らされている。
風が顔に触れると、冬にでも戻ってしまったかのように冷たくて、つい、首をすくめてしまう。
『こんな寒い日に、ワンピースなんて着てくるからだよー。』
テルは少し呆れ顔で、私の頭にポンと触れる。
「だってぇ。」
『それに、こんなに裾を翻して、誰を誘ってんの?』
『他の男だって見てるんだからね。』なんて、ぶつぶつ言いながら、少しだけ先を歩くテルの背中はなんだかいつもよりも小さく見えて、頼りなく見えた。
ピンクの花びらが勢いよく舞いあがると、テルの姿が花びらに淡く溶け込んで、どこかに彼を連れて行ってしまいそうで胸がキュンと痛んだ。
『ほら、行くよ?』
私の数歩前、手を差し出し、穏やかに微笑む彼に、心のざわめきを隠し切れず、駆け足ですり寄ると、私の手はギュッと握られる。
冷たい風に冷やされた指先から、熱が伝わり、ほのかに体が温かくなった。
君との日々、さくら色
end…