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□君に、託すよ
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なんて、ことをしてしまったのだろう。
タギルとアレスタードラモンの咆哮に問われて、自分でも何をやったのかわからなかった。けれどアスタモンに捨てられ、彼の真の姿――クオーツモンが現れ、自身が操られていたのだと知ったとき。
なんて、ことをしてしまったのだろう。と、罪悪感が一気に押し上げてきた。
私は、あの時のタイキさんのようになってみたかった。ただ、それだけだったのに。彼を、尊敬し憧れた彼を、傷つけてしまった。あんな、ひどい傷を。
「お前も、オレと同じか」
タギルが静かに呟く。彼は私が操られていたのだと知った後は怒りなど忘れたようだった。気遣うように、優しく笑った彼は私と同じでけれど確実に違う。
操られていたのは、私の弱さだったのかもしれない。だがきっと、彼らは私を責めないのだろう。むしろ、優しく包んで労ってくれるに違いない。
だからこそ、私はタイキさんに憧れた。だからこそ、私はタギルを認めることができる。
「タギル、私は」
「リョウマ! 話は後だ。タイキさんに謝るなら、こいつをハントした後でいいじゃないか」
にっ、とタギルが笑った。何も言わずに、いいんだと言ってるようなその笑みに救われるような気がした。
彼が強いというのは間違いではないのだ。彼はハントの腕も、心の強さも。私たちが憧れるタイキさんに近づきつつある。だからこそ、タイキさんも今彼を選ぶだろう。六人目の英雄として。
「タギル、あれなんだ!?」
「っ!?」
アレスタードラモンに言われ見上げればクオーツモンの体の一部が点灯をしていることに気づく。そして、あっという間にそれは貯まりすべてを消す波動が打たれる。
「クロックモン、必殺技じゃ!」
「チッチッチィ!」
時計屋のおじさんとクロックモン。そして伝説たちやアイル、レンが時を止めてる間。ブレイブスナッチャーによるバクラモンの腕の引き上げがもう一度行われる。タイキさんはタギルにゴーグルとともに、希望を託した。
「えぇっ、無理っすよ! オレが……」
タギルが弱気になるなんてらしくない。でも、タイキさんの叱咤はタギルのたぎる力を取り戻せる。その光景に、ギュッとブレイブスナッチャーを握る力を強めた。
「よっしゃあ! 行くぜ、アレスタードラモン!」
「おう!」
タイキさんのゴーグルを身につけ、アレスタードラモンに乗り飛び立つ彼の手にブレイブスナッチャーを渡す。
「頼んだ、タギル!」
「あぁ!」
タギルの奇策により引き上げられたクオーツモンに対抗するただ一つの武器。
きっと彼なら大丈夫だ。タイキさんも、そう言うに違いない。
「わしらの役目も、終わりじゃ……。お前もなクロックモン」
「チッチッチ〜後はタギル自体だね」
私たちの役目は、終わった。後は君に托すよ。
消える間に見たその後ろ姿は一人の英雄として、たくましいものだった。
君なら、きっと――。
もう、君はあのときのような未熟なハンターではないのだ。
2012.3/26