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□またこうして会えてなんだか嘘みたいだけどでもこれってきっと幸せだよね
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 クオーツモンのデシタマの管理は自分がやる、と彼が言ったからタギルの元にガムドラモンが戻ってきても自分の元には彼は戻ってこないのではないか、なんて思ったのも事実だ。
 けれど彼はちゃんと自分の傍にいる。目の前に、笑って立っていてくれている。
「ガムドラモンがいなくなっちまったし、まだまだはぐれデジモンがいるんだ。オレがいねぇとなぁ、なぁタイキ」
「シャウトモンっ」
 嬉しくなって少しだけ目に涙を浮かべたタイキはしゃがみ込みシャウトモンを優しく抱きしめた。目尻を下げたシャウトモンが照れ臭そうに笑っているのを見ながら、彼の目を真っ直ぐに見据えて、「おかえり」と言ってから抱きしめる力を強くする。
「怪我はもう大丈夫なのか? タイキ」
「うん。もう一ヶ月も経ったし、ちゃんと治ったよ。跡は残ったけど。シャウトモンも大丈夫だったんだな。キュートモンたちに感謝しないと」
 一ヶ月前の戦いで負った傷を気遣うシャウトモンにタイキは微笑んで、クロスローダーを取り出した。中からはキュートモンたちの声が聞こえる。一部のデジモンはクオーツモンのデジタマ管理のために城に残ったようだがワイズモンがいれば交代制でこちらに来ることも出来るだろう。
 シャウトモンを抱きしめたまま、タイキは彼と額と額をくっつける。シャウトモンがいることが嬉しいと純粋に思ったから。
「タイキ、また宜しくな」
「あぁ」
 にこ、と微笑んだタイキにシャウトモンも微笑み反した。
 デシタルワールドとリアルワールドの壁面が無くなった、ということはもしかしたら自分たちがデジタルワールドにまた赴くことが出来るのかもしれない。
「シャウトモンの王様っぷりも見てみたいなぁ」
 と呟いたタイキにシャウトモンは誇らしげに「オレに惚れなおすなよぉ?」と返した。
「シャウトモンが戻ってきてくれて嬉しいよ」
 ゆるりと返しながらタイキは立ち上がる。クロスローダーを掲げて、他の仲間たちも呼び出したタイキは明るく笑った。
「みんなも。また宜しくな」
 おう、やらうん、やらそれぞれが返事を返すのを嬉しそうに聞いてタイキは微笑む。
 シャウトモンにとっては、そのタイキの微笑みが自分の誇りでもあった。だからその微笑みをもう一度見れて、とても嬉しいと思う。一ヶ月前の戦いでは負った傷に苦しむタイキを見るのは辛くもあった。そして、あのまま別れなければならなかったことも。
 皆をクロスローダーに戻して、タイキはシャウトモンの手を取った。
「行こう、シャウトモン」
「あぁ」
 今度は、ちゃんと守ってやりたい――。その手を握り返す。
「はぐれデジモンは、ほっとけないもんな」
 そう言ってから、でも、とタイキは付け足す。少し躊躇すれような声音で。自分を見上げたシャウトモンに優しく微笑んだ彼はまた瞳に涙を浮かべていた。
「またお前に会えたのは――……。っなんでもない」
 その言葉は最期まで紡がれることはなかったが、けれどそれはシャウトモンも同じでだからこそわかること。
「そうだな……タイキ」
 名前を読んで、繋いだ手を幼い子供が母親を見上げてそうするようにくんと引く。不思議そうな表情を浮かべたタイキが顔を近づけたのを見計らって首元に抱き着いたシャウトモンはその瞼にキスをした。
「……っシャウトモン?」
「へへ」
 してやったりと言わんばかりににへらと笑うシャウトモンにタイキは耳元を真っ赤にする。
「デジタルワールドにいつでも来いよ。タイキたちなら何時だって大歓迎するからよ」
「う、あぁ」
 照れながら返事を返したタイキは頬を掻いて、それから考える仕草をしてから。勢いよくシャウトモンの腰に手を回し抱き上げ、お返しと言わんばかりにシャウトモンの鼻先に口付けする。
「約束だから、ちゃんと招待しろよな」
 目前のシャウトモンが吃驚した表情をしていたので満足して、シャウトモンを下ろしたタイキはにっこりと笑った。
「ったりめーだろ! なんてってキングだからなぁ」
 返しつつも、シャウトモンも豪快に笑い出す。
「タイキさーん、タギルが!」
「まだまだダメダーメね」
 タギルの突っ走りっぷりに参ったのかユウが遠くからタイキの名を呼んでいる。ダメモンもいつもの口癖を発しているようだ。
「行くか」
「あぁ」
 顔を見合わせて、二人同時に走り出した。その手をしっかり握ったまま。




2012.4/4

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