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□鏡の中の幻影
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「行くよ、皆」
「OK!」
カービィの号令とともに、全員で鏡へ飛び込んだ。
――そこは、氷点下の氷の世界。氷の城が静かに佇む。
「寒いね」
四人固まって城の入口に立った。吐いた息は白く、それだけ気温は低い。
「よし、入るよ」
そっと足を踏み込んで、カービィは辺りを見渡した。他の三人は城へ入らず、カービィの様子を窺っている。
城の内部は外よりも気温が低い。足元も氷で出来ており滑りやすかった。敵も相当の数だ。それに、トラップも仕掛けてあるかもしれない。
そう感じたカービィは数秒間、考えた。
「よし、ここは皆一緒に行こう」
そして振り返り、カービィは三人に言う。三人は顔を見合わせ、頷いた。
カービィを先頭に、四人は進む。
坂から転げ落ちる敵や、中ボス達との戦闘が行方を阻んだ。だが、皆で進めば何ともない。
「カービィ、覚悟!」
「――……っはぁ!」
飛び掛かる敵にキックを食らわし、カービィは部屋中を見渡した。赤カービィがカービィに駆け寄る。
「ねぇねぇ、いっぱい宝箱があるよ」
数メートル離れた場所で黄色カービィが無邪気にはしゃいでいた。緑カービィはそんな彼を窘めているようだ。
「さて、と」
「マップを見ると、あっちがボスの部屋みたいだよ」
マップを見ていた赤カービィが右側を指す。カービィはマップをのぞき見し、確認すると赤カービィに頷いてみせた。
「よし行こ――……っ!?」
「ピンクっ?」
しかし、歩き始めようとして、殺気に近い視線を感じた。赤カービィも同じく、視線を感じたのか前方を睨む。
殺気を放ち、氷の壁から出て来たのは――シャドーカービィだった。
黄色カービィも、緑カービィもただならぬ雰囲気に駆け寄ると、シャドーカービィの前へ立ちはだかる。
「ようやく、会えた」
そう言って、シャドーカービィはにこり、と笑った。
「シャドーカービィ!」
「ようやく、君達を殺せる」
シャドーカービィは低く、殺意の満ちた声で言った。だがその中に、迷いも入っていると、カービィは感じ取っていた。
(なんだ? )
あの時と同じ、"違和感"。
シャドーカービィはただ、自分達を殺したいと思っている。
けれど。
本当は、どう思っているのだろう。彼は。
本当に、僕らの闇なんだろうか――?
「行くよ!」
爆音が響いて、氷が割れた。シャドーカービィが爆弾を投げたのだ。
無事な場所に降り立ち、四人は視線を合わせた。
「――っ」
八つの瞳が力強くなる。
「はぁっ!」
まずは、シャドーカービィを退け、ボスを倒し、鏡の破片を取り戻す。視線で言葉を交わし、確認した。
その間にも、シャドーカービィは爆弾をいくつも投げる。
それを避け、まずは赤カービィが動いた。
「てぇぃ!」
ビームを出し、シャドーカービィを攻撃する。
「こんな攻撃!」
シャドーカービィはそれを避けたが、目の前に炎が広がり、彼を襲った。
「な――っ!」
カービィのファイヤーだと気付く。――避けられない。
「うわぁぁぁぁ!」
悲鳴を挙げて、シャドーカービィは炎に包まれた。黄色カービィと緑カービィが武器を構える。
炎が消えて、シャドーカービィはかろうじて立っていた。
「う……」
視界が歪む。シャドーカービィは走り、その場から逃げた。
「待って!」
誰かの声が聞こえたけれど、走り続ける。
「待ってよ、シャドー!」
逃げたかった。
悔しさに涙がこぼれ落ちる。どうして、と呟いた。