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□鏡の中の幻影
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ダークマインドは、再び鏡を纏った体当たりをした。赤カービィが避けられず、倒れる。
残ったのは、カービィただ一人だ。
恐怖と絶望感が、カービィを襲った。
ダークマインドが鏡を左右に動かし、カービィに襲い掛かる。
「!」
カービィは思わずマスターソードで自らを庇い、唯一の武器を飛ばされてしまった。
高い音を立てて弾かれ、高く飛んだマスターソードが地面に突き刺さる。
「しまった――……!」
そちらに気を取られ、カービィは再び襲い掛かる鏡に気付かなかった。
「あぁぁあぁあ!」
鈍い音を立てて、鏡が体に当たる。衝撃でカービィの体が飛ばさ、地面にたたき落とされた。身体中に痛みが走る。絶望で、カービィの瞳は光を失った。
笑うはずのないダークマインドが、笑う感覚がする。
「ダーク……」
彼の存在がなくなったことを確かめると、シャドーカービィはメタナイトを振り返った。
その瞳は決意に満ちて、誰もを畏怖に陥れる力がある。
「カービィ達は、何処?」
凜とした声で、シャドーカービィは聞いた。メタナイトは驚きを含めた声で、シャドーカービィに問い返す。
「何故、お前はカービィ達を追い掛ける」
その問いに、シャドーカービィは微笑した。
「考えた。――僕はダークを傷付けた奴らが憎い」
考えながら、シャドーカービィは答えた。今までのことをゆっくりと思い出し、結論を出す。
「だけど互いに傷付け合うことなんて、僕は愚かだと思う」
今まで自分はカービィ達を倒す、それだけを考えていた。だが命じられたままに、怨念に捕われて、誰かを傷付けるなんて愚かなことだ。
これはきっと、他人からしたら「綺麗事だ」と笑われるだろう。けれど、それでも。
「僕は、傷付け合う世界なんて――……いらない!」
自らの誇りと、意地をかけて、守りたいものがある。
「お前は……、カービィそのものだな」
メタナイトは呟くと、暗く光る内部を見渡した。
「カービィ達はダークマインドに連れて行かれた。ここからは追い掛けることは不可能だ」
メタナイトはシャドーカービィに向かって叫ぶ。シャドーカービィはしばらく瞳を瞬かせたが、不適に笑ってみせた。
「僕はダークマインドの"手下"だよ。ダークマインドに味方するように見せかけて仲間に入ればいい!」
自信に満ちた瞳が、輝いた。メタナイトはシャドーカービィにカービィを重ね、微笑する。
そしてシャドーカービィは姿を消した。
「カービィ、頼んだぞ」
メタナイトは鏡の世界を思い、カービィに願いを託した。
***
自分の意思で、カービィ達の下へ走る。シャドーカービィは息を切らせ、止まった。
目の前ではダークマインドがカービィにとどめを刺そうとしている。
「――……!」
「危ない!」
ダークマインドが巨大なビームを打つ直前に、シャドーカービィはカービィを押し倒した。
ビームがシャドーカービィに直撃し、背中が焦げる。
「え」
カービィはシャドーカービィを凝視した。瞳に光が戻る。
「カービィ……」
痛みに声が掠れているが、構わずシャドーカービィはカービィを思いっきり叩いた。
「馬鹿!」
叫び、ダークマインドを睨みつける。
ダークマインドもシャドーカービィの思わぬ出現に驚いたようだったが、すでにわかっていたようにシャドーカービィも狙いに定めた。
「君が死んだらこの鏡の国は誰が助けるんだよ!」
シャドーカービィはファイヤーでダークマインドを攻撃した。あまり喰らってはいないと判るとファイヤの能力を捨てる。
「誰って」
「君はこんなところで死んでいいのか!? 今まで何故鏡の破片を集めてきたの!」
シャドーカービィはパラソルを取り、振り回す。ダークマインドの鏡が割れ、カッターとなって飛び散った。
「それは、」
カービィは俯き、シャドーカービィから視線を外す。シャドーカービィはカービィを守るようにダークマインドの前に立ちはだかった。
「僕は僕自身を元に戻すために……、」
シャドーカービィにダークマインドのレーザーが当たる。それでもシャドーカービィは怯むことなくダークマインドに立ち向かう。カービィの視界が歪んだ。
「この世界を、救うために、来たんだ」
「だったら」
必死に攻防をしながら、シャドーカービィは叫んだ。
「こんなところで、諦めないでよ!」
涙が溢れ、こぼれ落ちる。カービィはゆっくりと立ち上がった。
「うん、そうだよね!」
笑みが零れ、カービィは微笑む。そしてダークマインドを睨みつけ、
「僕らはこんなところで諦めたりなんてしない!」
叫んだ。
シャドーカービィは大きく頷きパラソルを大きく振りかぶる。
「はぁっ!」
攻撃を喰らったダークマインドが怯んだ内に、シャドーカービィは地面に突き刺さったままのマスターソードへ駆け寄った。
「カービィ!」
マスターソードを引き抜き、カービィへと投げ渡す。カービィはマスターソードを受け取ると、宙に翳した。
そして、ダークマインドの瞳へと突き刺す。
「!」