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□君という名の星
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 綺麗に透き通るその瞳が好きだった。



 遠い夜空にきらきらと輝く星のように、彼の瞳には同じ、輝く銀の星があった。それは届きそうで届かない。
 ……よく似ていると思う。
 笑うその表情があまりに綺麗だから思わず手を伸ばすけれど、結局触れられない。
 あぁ、どうしてこう、遠いのだろう――。いつも思う。
 星は、近いようで遠い。彼はまるでその星のようだ。
 だから、彼の名前を呼んで少しでも近くにいるように思わさせている。自己満足だけれど。
 今だって、そう。

「コンラッド」

 その名を呼んで、近くにいるように思わせる。



 雪の降るスタジアム。沸き上がる観客の歓声。だがそんなものは一気に思考から離される。
 目の前の彼は、忠誠を誓ったはずの国とは違う軍服を着ていた。それはおれたちが今いる国の服。瞳の中にある星は、どこか悲しげに光る。
 彼が三人目だ。
 大シマロン代表。ウェラー卿コンラートはそこに現れた。

「どうして!?」
「ユーリ」

 彼はおれの名を呼んでくれる。少し、遠慮するようならしくない声で。でも。

 彼は遠くなった。なってしまったんだ。

 そう気づいて、愕然となる。

「どう、して――……!」

 だってあんたは、いつだっておれの側にいてくれるんだろう?
 雪の上に自分の涙が落ちる。ベンチに座るヴォルフラムたちがどんな顔をしているのかはわからない。
 本当に、遠くなってしまったのか。
 事実彼は大シマロンの軍服を着て、大シマロン代表としてこの天カブに参加している。

「コンラッド……」

 本当に、本当にそうなのか。
 目の前の星は、遠く輝く。前よりも、その星は遠くなってしまった。悲しげに、おれを見つめる星。
 雪降る大地、天カブの舞台であるスタジアムの真ん中にまっすぐに立っているウェラー卿コンラートは剣の把に手を掛けた。
 一度失ってしまったのではないかと恐怖した。その彼は目の前にいるのに、手は届かない。心も掴めない。

「コンラッド……!」


その名を呼んで、近くにいるように思わさせている。
 遠く輝くその星を。








END

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