SS

□happiness.
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『せつなの幸せは、何?』

 幸せ?

 何だろう。
 私の幸せは、一体何だろう。


「……」
 ラブに連れられて着いた家の前で、せつなは緊張していた。
 優しく、自分を受け入れてくれたラブの家族はにこやかに笑い、せつなが入るのを待っている。
 せつなと手を繋いだまま、ラブは腕を大きく振った。
「嬉しいな――!」
 つられてせつなの腕も大きく振られる。
「せつなと一緒に暮らせるんだもん!」
「そ、そうね」
 ラブの笑顔はとても嬉しい、という彼女の感情を素直に表していた。
「これからは私とせつなと美希たんとブッキーで、みんなで幸せゲットだよ!」
 大きくガッツポーズをとると、ラブは楽しそうに笑った。それを見て、せつなも微笑む。
 彼女のこの笑顔に、緊張も解れていく。
「ほら、早くしないと風邪引くわよ? もう遅いんだから」
 ラブの母が呼びかけたのもあって、ようやく二人は家へ帰った。
「たっだいま――!」
「た、ただいま……」
 ただいま、という一言でさえ、新鮮だ。


 布団に潜ったせつなは、思案していた。
 四人目のプリキュアが、自分。"幸せ"のプリキュア。

 ――でも、"幸せ"って何?

 考えれば考えるほど、絡まり解らなくなる。
「せつなぁ、寝れないの?」
 隣に寝ていたラブが、寝ぼけたまま聞いてきた。
「ううん、もう寝るわ」
「そう……」
 そう、とラブは返事を返すと、すぐに眠りに入る。眠くて仕方がなかったのだろう。こういうところも彼女らしい。
 そんなラブにくすり、と笑うと、せつなは再び考えに入る。

『せつなの幸せは、何?』

 前にラブに問われたとき、今だにラビリンスの仲間だった自分は、わかっていなかった。
 "幸せ"
 それがどんなものか分かっていなかった。
(私の幸せ?)
 そんなもの、と思っていた。見下していた。
 けれど、彼女に出会い、変わった。

『幸せ、ゲットだよ!』

 彼女は、ラブはどんな些細なことでも、"幸せ"と言った。ラブと友人たちは、固い絆があった。
 それを、自分は不定してきた。 だが、――あの最後の闘いのとき。

『羨ましかった! ……羨ましいと思ったんだ』

 彼女が羨ましかった、と、ようやく自分の気持ちに気付いた。

 そこまで考え、せつなは瞳を閉じる。
 "幸せ"
 "幸福"
 今まで、私が欲しかったもの。それは、何だろう?
 それは、本当に些細なことだったのかもしれない。

 束縛も、何もない世界。
 みんなで笑い合える世界。

 そんな世界が欲しかったのかもしれない。
 ちらりと隣を見ると、女の子らしかぬ鼾を掻いてラブは幸せそうに寝ていた。よっぽど疲れたのだろう。
 それに微笑み、せつなはそっと胸あたりに手を添える。

 笑顔が大切なものだと、ようやく気付いた。
 皆が笑えることが大切なのだと。

 それがきっと、幸せ。

 大切なことに気付けたことが。
 ――幸せ。

 ようやく気付いた。
 大切なものを、守りたい。

 明日になったら、また笑おう。

 おやすみ。


 また明日が来たら、それだけでも幸せ――。


 

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