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□紅の鎖
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人は皆、血が必要だ。
おもちゃみたいに出来ていたらよかったのに。乱暴にしたらめちゃくちゃに壊れてしまうおもちゃ。それこそ自分の望む姿。でも人も乱暴にしたらすぐに壊れてしまう。結局は同じか。いや、おもちゃは、修復することができる。人は死んだらそこまでだ。
こぼれ落ちてゆくこの紅い液体は人を形作るには必然なもの。無くなったら人は死ぬ。
どうして俺は生きているのか、わからなくなるときがある。それは今も、今も昔も。
周りは深夜なのもあって静かで、こんな自分に気付く者もいない。気付いたら恐らく大騒ぎになるだろう。あくまで俺はこの国の゛王子゛なのだから。
痛みから現実に戻されるわけでもなく、俺はただこぼれ落ちる血を眺めていた。じわりじわりと溢れては腕からこぼれ落ちてゆくそれは戦場で嗅いだ血の臭いと同じで、息苦しい。
ならば何故こんなことをしているのだろう。
俺は生きたくない、こんな苦しくて悲しい現実はもうたくさんだ。現実逃避。何も考えたくないから逃げたい一心で腕を切った。痛みはない。戦場で受けた痛みに慣れてしまったのかもしれない。
身体はまるで重い鎖に繋がれているかのようだ。どうして人には血が必要なのだろう。いらない、こんな鎖は重いだけなのに。
傷は痛くないけれど、胸は酷く痛む。苦しい。痛い。
生きたくないのに本能は生きろと命令する。
紅い鎖に繋がれて、俺は今も生きている。それは生きていく為に必要不可欠な鎖。
どうして、死ねないのだろう。生きたくないのに。
瞼を閉じた。
生きろ、と本能が叫ぶ。
俺は一生この鎖に繋がれたまま、生きて行くのだろうか。
END