SS

□拍手御礼SS 再録
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【誰のお嫁さんになる?】






「コンラート。俺の嫁になれ」
「は?」
 素晴らしいぐらいの笑顔で言われ、失礼だとは思ったがコンラートは聞き返していた。眞王はにやりと笑い、先程の言葉を言い直す。
「コンラート、お前は俺の妻になれ」
「え」
 二回も言わせては、もう聞き返すことも出来かった。ウェラー卿コンラートは脱力する。突然何を言い出すのだろう、この人は。
「……嫌か?」
 少々残念そうな表情になった眞王を見て、慌ててコンラートはすぐさま「そんなことは御座いません!」と言うが、内心、
(自分ごときが敬愛する眞王陛下の伴侶になるなんて)
と混乱している。
 それを察しながらも、眞王は本心から彼が欲しくてたたみかけるように言葉を発した。
「俺ともに居たいと思ってくれているのか!?」
 笑顔を作って、コンラートの剣ダコのある手にそっと触れる。コンラートは一瞬顔を引きつらせたが、笑顔で眞王に「えぇ」と頷いて見せた。
「嬉しいぞ、コンラート!――……では」
 眞王が大きく手を振り上げる。それに(しまった!)とコンラートは目を瞑った。
 眞王は、コンラートに求婚するつもりだ。
 ここはどうするべきだ、と一生懸命考えるが、もうすでに眞王の手は振り上げられてコンラートの頬を打つ直前である。

 ――ここは覚悟を決めよう。

 コンラートはぎゅっ、と拳を握りしめた。
 こうなったらもう彼の嫁に、伴侶になるべきだ。だってそれは彼が、敬愛なる眞王陛下が望んで下さった事なのだから。それに、これはとても光栄な事でもあるじゃないか。眞王陛下が、俺を――。 俺を。

「ちょっと、待った――!」

 だが眞王が手を振り下ろし、コンラートに求婚しようとしたその直前。
 声変わりしたのか疑わしいぐらいの、アルト声が眞王廟に響いた。
 驚き、コンラートが振り返ると――、もう我慢出来ないといった表情で村田建が立っていた。眞王は「やはり邪魔するか」と予測していたように呟く。

「そんなこと、させないよ。眞王」
 殺気を飛ばした笑顔で、村田は言った。





<続く>
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