SS

□拍手御礼SS 再録
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【穏やかな休日と性欲】




「コンラッド」
 背中越しに名前を呼ぶと、彼は軽く首を回してこちらを見た。薄茶の瞳の中の銀の星が、太陽の光を受けて煌めき、綺麗だ。
「ユーリ?」
 彼は振り返り、こちらの様子を窺う。ユーリの肩に手を置き、「どうしました?」と問い掛けてくれた。
 意を決してユーリは勢いよく振り向くと、彼の唇を奪う。
「んっ!」
 コンラッドは短い悲鳴をあげたが、唇を塞がれてはくぐもった声しか出ない。
 彼の口の中に舌を入れると、素早く彼の舌を捕まえて、互いの舌を絡めた。彼は眉を苦しげに潜める。
 水音が静かな部屋に響いて、興奮してしまう。
 しばらく舌を絡め合い、コンラッドの息があがった頃に離れる。コンラッドは感じていたらしく、頬を朱に染めていた。
「は……っユーリ!」
 恥ずかしげに彼は視線をずらし、口元を拳で押さえた。それを見て、ユーリは感じ悪い笑みを零す。
「コンラッド、感じてただろ?」
 愉しんでいるようなユーリの口調に彼は力が抜けてしまう。
「ユーリ」
 この名付け子が、自分をどう思っているのか。わからなくなる。
「あなたは意地が悪い」
 小さく呟いた言葉はユーリの耳に届いていたようで。

「褒め言葉だな」

 ユーリはいつものように、笑った。太陽の微笑みのような、明るい笑顔だ。
 コンラッドはその笑顔が好きだが、今のユーリは何だか少し、怖い。だが反対に身体中が熱くなって、彼を求めている自分もいた。二つの思いが絡まり、思考が纏まらなくなる。
「コンラッド」
 その声で呼ばれたら、俺は。

 ――あなたが欲しくなってしまう。

 ずらした視線も意味はなく、心はあなたを求めている。

「コンラッド」
 ユーリの視線を強く感じて、コンラッドの身体が震えた。
 全身震えて、立つことさえ出来ない。
 これは、恐怖からではなくて、多分。

 彼が欲しくて、
 彼を求めていて。
 動きたくないと、思っているからだ。

 そっと溜息を吐いて、ユーリから逃げるように俯いた。ユーリが体をずらし、自分を抱きしめてくる。
「コンラッド?」
 耳元で名前を囁くと、ユーリはコンラッドの耳に息を吹き掛けた。
「っ――……!」
 身体中震えて、コンラッドは瞳を閉じる。
 焦れたのか、ユーリの手が肩に触れて、勢いよくベッドへ押し倒された。ベッドのスプリングが軋む。
「ユーリっ」
 仰向けに転がされると、性急なキス。
「んっ!ふぅ…ん」
 鼻から抜けた声が出て恥ずかしいとは思ったが、ユーリの深いキスに翻弄されてしまい、余裕はなかった。
「コンラッド」
 名前を囁かれて、身体が震えた。もう堪えきれない欲望が理性を壊す。
 ユーリの雄の表情。それに、背筋が凍る。彼が欲しくなる。

「ユーリ……」

 熱っぽい声で名前を呟けば、彼は笑った。

 後はもう、身を任せて快感に喘ぐだけ。




END
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