小ネタ集
□まるマ
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ポッキーゲーム
「ポッキーゲーム……ですか」
「そう」
馴染みのない菓子を眺めながら、コンラートはユーリの言ったゲーム名を復唱した。
その菓子は皆のために買ってきたようで、十箱ぐらいはあるだろうか。厳重に縛ったビニール袋からそれを取り出したときは少し驚いたが、地球の菓子は皆馴染みがないだろうからきっと喜ぶだろう。
その菓子を使って、ゲーム? と不思議げなコンラートにユーリはゲーム説明をする。
「ポッキーゲームっていうのはまぁなんていうか……一種のお遊びみたいなもんで、えーと」
細長い菓子を一本銜えると、端のクッキーを指し示した。
「二人で一本のポッキーを食べて、多く食べた方が勝ち。でも唇が触れてもダメっていうルールなんだよ」
「……それは男女でやるものじゃないんですか?」
コンラートの言葉にユーリは遠い方向に目を向ける。
「……いればやってるよ」
しまった、と思いコンラートは慌てて取り繕った。
「じゃあ、やってみましょう」
コンラートの言葉にユーリはいつも通り笑った。それになぜかほっとする。
「よし、ぜってー負けないかんな!」
ユーリとしては、あわよくば事故と見せかけてコンラートの唇を奪う……チャンスなので、負けられない。
「よし、準備おっけ」
男同士がポッキーゲームというのもちょっと考え物だが、楽しめればそれでいいものだ。
「じゃあ……スタート!」
ポリポリ、とポッキーをかじる音が室内に響く。コンラートはポッキーを食べるのはおそらく初めてのはずで、ユーリの方が優勢ではあった。
やがて距離が縮まると、心臓の音が高ぶる。もうすぐキスが出来るはずだ。そう思うと唇が震えた。
「俺の勝ちですね」
だがコンラートがそう笑ったのでユーリはハッとする。ポッキーは半分以上コンラートに食われていた。
「あっ……!」
唇を奪うことにこだわりすぎたのか、とユーリは慌てるものの、その唇が触れる寸前にコンラートはポッキーを折ってしまった。空しくポキリ、と音が鳴る。
「美味しいお菓子ですね、これ」
コンラートがそう言ったのと同時にユーリはがっくりと肩を落とすしかなかった。
「ユーリ?」
「な、なんでもない」
そう簡単に彼の唇を奪うことは出来ないのか。
「も、もう一回やろう!」
ユーリの口からはもう一度、という言葉が無意識に出た。
END