小ネタ集

□遊戯王
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 痛い。

 きりきりと心臓が痛む。

 ――滅びの運命、呪い。

 彼らの言う言葉は自身の奥底に響いてこびり付いて消えない。
 痛い。

(考えていても、仕方の無いことなのに……)

 両親の研究が生み出した悲劇が、たくさんの人々を殺し、残された人々の人生を狂わせた。それは親友であるジャックやクロウも同じだった。それなのに彼らは自分を慕ってくれて、けれどまた同じような悲劇を、自分が生み出してしまうのかもしれないという言葉。

(怖い)

 得体の知れない、不安。恐怖。握り締めた手は震える。
 知らずの内に涙が零れ、そしてその涙は大きな手に拭われていた。

「大丈夫?」

 優しく、安心の出来る声。顔を上げると心配そうな表情でブルーノがこちらの顔を覗き込んでいる。彼はベットの枕元に膝をついて、遊星の頭を優しく撫でた。

「ブルーノ」

 いつの間に、と遊星は思ったが自身が気づかなかっただけのようで、ドアを叩いても返事が無かったから寝ているのかなと思ったんだけど、とブルーノは言葉を濁らした。

「そうか」

 極力、いつも通りに返そうとしたが声が震えてしまっている。遊星は瞳を閉じて黙り込んだ。

「……何かあったんだね」

 ブルーノはそれだけ言って、遊星に説明を求めることはしない。ただ、そっと頭を撫でて遊星が口を開くのを待っていた。

「大丈夫だよ、遊星。ボクも、皆もいるから。だから今は寝て休んだほうがいい」

 遊星が口を開こうともしない、出来ないのを察したのか、ブルーノはベットの端に腰を下ろし遊星の頭を撫でていた手を、そのまま背中へと回す。

「調整は……っ」
「ほら、遊星」

 D・ホイールの調整をどうするのか、と言いかけた遊星の言葉を遮り、ブルーノは遊星を無理やり寝かしつける。納得の出来ない表情の遊星にブルーノは穏やかに笑った。

「お休み、遊星。調整はボクがやっておくから」
「……あぁ」

 遊星が他人の気遣いを無駄にしないタイプでよかった。ブルーノは微笑んで、二回ほど遊星の背中を叩いてやる。遊星は渋い表情で毛布を被った。



 遊星が寝入るまで、ブルーノは歌を紡いだ。やがて聞こえてきた寝息は穏やかで、きっと悪夢ではないのだろうと思わせる。こうして見ると、遊星はまだ完全な大人ではなく、強がりで懸命に背伸びをしている未熟な青年なのだとブルーノは思った。
 アクセルシンクロを初めて成功させたプラシドとの決闘(デュエル)で見せたあの傷ついた表情は痛々しく、普段の彼からは感じられない悲痛な叫びを含んでいた。自分だから、否、D・ホイーラーだからこそわかるあのインスピレーションは哀しみを感じさせて、遊星はひどく不安定な感情を持っているのだと思うと不安にもなった。

(遊星……)


 穏やかな寝顔で眠る遊星はまるで子供のように幼い。

(どうか君の運命が平穏なものであってほしい)


「遊星……、君はボクが、――私が守る」


 どうか、彼を守れる力を。

 運命に抗える力を、ボク等に。





守護者は願う





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