小ネタ集
□遊戯王
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今日は雨。
あまり外出はしたくないのだけど、今日買い出しに行かないと特売を逃してしまう。
「たまには、こうやって歩いて行くのもいいね」
「あぁ」
だから今日は気分転換も兼ねて、歩いて買い物へとやって来た。急いで特売の品をカゴへ入れ、その後はゆっくり商品を見る。あんまり無駄なものを買うとしっかり者のクロウに怒られてしまうけど、遊星がチョコを食べたそうに見ていたのでファミリーサイズのチョコを一袋だけ買い、あとは特に買うものはなかったので会計して。遊星が「いいのだろうか」という顔をしていたのを可愛いな、なんて思ったりする。
帰り道にも雨は止む気配を見せなかった。二人並んで歩く道の途中、おそらく交際中の男女が傘で周りに見られないように隠しながら口づけを交わしているのを見てしまい、こちらが恥ずかしくなって視線を逸らす。
(甘酸っぱいってこういうことを言うのかな……)
視線の先の遊星を捉えると、彼はじっとそれを見ているのでもなく、何を思っているのかこちらの方をいつもの不思議そうな表情で見上げていた。
「ブルーノ?」
あぁ、彼は特別そういうのを甘酸っぱいだとかは思わないか。まぁ遊星はそういうの疎そうだもんなぁ。
でも、それを自分にされたらどんな反応するのかな?……意地悪だとは思うけど、見てみたい。
好奇心に駆られて、ボクはちょっとだけ意地悪をする。
「遊星」
名前を呼んで気を引かせると、すっと彼の唇を奪った。彼らには見られないように、傘を盾にしながら。遊星の傘で濡れることはない。数秒は、そうしていただろうか。
「……」
ぽかんとしていた遊星が表情を困った顔に一変させる。僅かながら顔が赤い。
ふと視線を感じて先程の男女の方を見ると、彼らは顔を真っ赤にしてこちらを凝視していた。つまり、彼らにもボクらの行為が見られていた、ということになる。
雨の日にはこういうやり方もあるんだな、なんてボクは笑うしかなくて。口を開けたままの遊星はそれを見て複雑そうな表情をしていた。
「こんなところで、何をするんだ」
心底困っている顔だな、これは。頬が思わず緩んでしまうのが自分でもわかった。
「ブルーノ」
「うん、ちょっと意地悪だったよね……ごめんね、遊星」
頬に口づけを贈ると、ますます困惑した表情になるのが可愛らしい。可愛いといえば彼はもちろん怒るのだけど、でもやはり「可愛い」という言葉がよく似合うのでつい言ってしまう。
「もう、早く帰ろう」
「そうだね!」
彼がさらに複雑そうな表情をしたが、ボクは一刻も早くポッポタイムへ帰って遊星にもっとたくさんの口づけを贈りたかった。
雨の日に歩くのも、悪くはないよね?
―END―