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□そこに愛などない
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 一瞬でも気が抜けないと思いながらも頭を撫でられたりする度にどこか嬉しいという感情が湧いてくる。コンラートは眞王を見上げたまま黙っていたが、眞王はややつまらなそうに彼の肩を掴んだ。
 二人っきりの室内は静まりかえっていて恋人同士という関係になったというにも関わらず、冷たさがまとわり付く。それは眞王という存在を警戒するコンラートが心まで囚われまいとしているからこそなのだが眞王は不貞腐れていた。こういった関係が嫌いだというわけではないが、正直なところもう少し可愛げがあった方がいい。
 口づけを交わして、コンラートの様子を見やりながらも眞王は考えた。変わらず無表情で黙りこくるコンラートの表情をどう崩すか。
 恐怖に染まった表情も、怒りを浮かべた顔も魅力的ではあるがそれだけではつまらない。それこそ、恐怖に慄き泣いてしまえばいいのだ。そういった表情を彼は見せたくないと思っているはず。そういったものもを無理やり暴くのは面白みがある。彼がどういった表情で泣くのだろうか。
「眞王陛下」
 だが眞王の企みに勘付いたのかコンラートがやや身を引く。無意識に自身を守ろうとしたのならばやはりルッテンベルクの獅子という名称はぴったりだということか。
「オレは……、ユーリの護衛がありますので今日はこれで」
「待て、コンラート」
 膝を突き頭を下げ、身を翻そうとした彼を呼び止める。その間にも考えを巡らしながら。
 コンラートの腕を掴んで身を引き寄せ、もう一度口づけてベットへ押し倒す。何をするのかという彼の表情に気づきながらも見て見ぬ振りをし、首に吸い付いた。
「しんお……」
 制止の言葉を発しようとしたのだろうコンラートの口を手で塞いで、低い声で囁く。
「あまり大声を出すなよ、コンラート。ユーリたちにばれるからな」
「……!」
 そうしてようやく彼の上着に手を掛けたところで、僅かにコンラートが戸惑うような表情を見せた。あとは手ひどくして泣かせてみようかと考えながら、眞王は笑って彼のシャツを開いていく。
 コンラートは止めることも出来ず、ただ自らの体を弄ぼうとする眞王の姿を見ているしかなかった。止められるわけがない。

 怯えてくれればいい、泣いてしまえばいい。恐怖に慄き、可愛らしい表情を見せてくれればよかったのだ。
 あの日からお前は俺のものなのだから、拒否権なんてない。大人しく従ってくれてればいい。
 箱の鍵として必要だから命を助けた。それ以上でもそれ以下でもない存在よ。




2012.0604 twitterでのリクエストSSです。


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