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□片思いは両思い
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「悲しくなんて、ないよ。」
その一言で、悲しくなるのは、どうして。
「コンラッド。」
ふわり、と風に誘われて、木の葉が舞う。
「ユーリ、どうしました?」
少し首を傾げて問う姿は幼く見えて可愛い。
コンラッド本人を目前にユーリは緊張した。
「なぁ、コンラッド。」
「はい。」
ふわり、と笑うその表惰は可愛くて、かっこいいというのは、一つの長所でしかない、と改めて確認する。
だからこそ、ユーリは次の言葉を躊躇せずに言えた。
すぅ、と息を深く吸う。真直ぐに彼を見つめて、真剣に思いを辺めて。
「好きだ。」
ざわざわ、と風が吹いている。
驚いた表情の彼が目の前にいる。……きっと想像もしていなかったんだろう。可愛い名付け子が、自分を恋人として望んでしまうなんて。考えもしなかったのだろう。
「ユーリ。……えーと。」
「冗談じゃないよ、ーコンラッド!」
言いかけて、強い調子でユーリに遮られる。
今は主人の言葉を聞こうと口を結んだ。
「ごめん、好きなんだ、コンラッド。」
真剣な、その表情がすべてを語っている。
……好きだ、と。
あんたが好きなんだ、と。
コンラッドは戸惑った。自分らしくないとは思う。
なのに、なのに、なのに。
(俺も、って…言えば。)
気持ちを言えば。好きだ、と。自分の本当の思いを。
「一一っ……!」
……どうして、こんな。
(苦しい……。)
だけど、俺はあなたに似合う人物ではない。だから。
「ごめん、なさい……。」
あ、とユーリが表情を曇らせた。それを見たくなくて、コンラッドはうつむく。
ごめんね、言えるのはそれぐらい。