SS

□言葉にならない
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 言葉なんていらない程に、君を愛してる。


***


「グウェン、好きだよ。」

 それは特に特別な意味はない言葉。
「……あぁ」
 グウェンダルの薄い反応に、コンラッドは苦笑した。それを見て、グウェンダルの眉間にシワが寄る。

 これは単なるお遊びだ。

 そう自分に言いつつも、コンラッドは僅かに期待している。そういう表情をしている。そして、グェンダルはそれに気づいていながらも、彼もまた自分に言い聞かせて、無視していた。
 もう、こんな時間か。
 呟いて、立ちがる。グェンダルのべットに勝手に座っていたコンラッドはこちらへ来た背の高い兄を見上げた。
 希望で輝く、独特の瞳。その瞳と冷たく輝くグェンダルの瞳がぶつかる。
 自分の瞳に比べて、直弟の、銀の星が瞬く薄茶の瞳はとても綺麗だと思う。あまりに綺麗だから、ずっと側に置いて、ずっと見ていたいぐらいに。
「グウェン、もう寝るの?」

 じゃあ俺は部屋に戻ろうかな。
 コンラッドはそう言ってすっと立ち上がった。だが、その体は肩を押されて、ベッドに戻されてしまう。
「グウェン?」
 そうやって首を傾げると、少し幼なく見える。
「いや、少し休むだけだ。もう少しここにいろ」
 グウェンダルがすとん、と弟の隣に座った。互いの表情がよく見える、場所に。そして、すぐに触れられる場所に。
 しばらくの間、何も喋らず、沈黙が流れた。
 ここからは弟の傷がよく見える。いつもは爽やかな笑顔で、それでもその傷は痛々しくて。護ってあげたかった。
 あの頃は、何もできなかった。でも、今は護れる。護ってみせる。
「グウェン――……」
 小さく名前を呼ばれて、振り向く。

 柔らかい感触が、した。


 ――「好き」。


 その言葉は、"言葉"にはならなかった。




END

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