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□残酷な愛を貴方に贈ろう
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 かのうら若き少年王は微笑んだ。幼い顔に、どこか大人びた雰囲気。黄金の瞳を細めて、目の前にいる使者に微笑みかける。
(ユーリ、あなたはどう思うかな?)
 あなたの想い人は私の物になったけれど。
 あなたは、何も言わない。いいえ、言えない。そうでしょう?
「サラレギー陛下、俺は」
 大シマロンからの使者。ウェラー卿コンラート。魔王ユーリの元部下で、今は大シマロンに使えている、青年。
「ウェラー卿。」
 名前を読んで、手を取り、引き寄せて。深いキスをする。
「――! ……んっ!」
 思わず高くて甘い声を出す彼に、満足する。此方を見ていた双黒の魔王が、息を呑んだのが分かり、サラレギーは口端を釣り上げた。
「私と踊りましょう?」
 手を差し伸べる。少し間を開けて、コンラートはその手を取った。ユーリが此方を見ているのは、わかっている。
 音楽が流れるのに合わせて踊る。ユーリに見せつけるように。
(綺麗だな、ウェラー卿は。)
 この人はどんなに汚れることも厭わない。彼の、ユーリのためなら。
 だから。


「僕のものに、なって?」


 あの日の夜。彼にそう言った。もちろん答えはわかっていた。
(あなたが欲しいんだ。)
 そう。私はあなたが欲しくなった。
 愛する主のためなら、何もかも捨てる。綺麗なあなたが。
 欲しくなった。
 真っ直ぐで不器用で、可愛いあなたが。
 ユーリなんかより強く、抱きしめてあげる。寂しい思いはさせないさ。
 近くで見ているユーリに、笑いかける。彼の瞳が驚きに丸くなる。
 奪おうなどと思っても、もう遅いよ。
 心の中で、彼に言った。
 だってもう離すつもりはないもの。
 ユーリ、あなたには出来ない事は僕がしてあげる。夜も、この人に愛を捧げる。そして、けして孤独にはさせない。
 あなたは何も出来ないのだから、彼を愛する資格なんてないんだよ?
 欲しいのだったら、泣いて、許しを請い、命を捧げて。私と彼に。
 音楽が、止まった。ユーリはいつの間にかどこかへ行ったようだ。
「陛下、もうそろそろお休みになられては?」
 ウェラー卿、と僕が呼ぶと、彼は笑った。偽物の微笑み。
 衝動に駆られて、もう一度彼の手を取る。自室へ戻るためだ。
 さぁ、これからもう一度。
 残酷な愛をあなたに捧げよう。


 ユーリ、あなたには出来ないでしょう?






END

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