SS

□月蝕―つきはみ―
3ページ/4ページ


 ユーリは彼に聞こえてしまわないように、低く、小さく呟く。触れている彼の手は、何時も以上に冷たかった。外回りをしていた、それだけでないと思わせられる位に。
 彼を探して、やっと見つけた時。虚ろな瞳で月を見上げる、彼がいて――、
 呼吸が止まった。

「あんたが消えて、いなくなってしまいそうだったんだ」


 まるで蝕まばわれているかのように、消えて、居なくなってしまいそうで。


 遠くから聞こえる唄が、月守の唄であって欲しい。そうでなければ、彼はどこかへ消えてしまう。


 夜は何時までも月が誘う。



END

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ