小ネタ集
□遊戯王
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「怖いのか」
頭を撫でられているのと、気付く。一人だと思っていた空間に私以外の者がいたのか。それに気付いて顔を上げる。
「怖いのか、"遊星"」
その声音は厳しくもあり、そして優しくもあった。私の同士、……いや、私の創った彼のコピー。『アンチノミー』。そうか、お前だったのか。声は嗄れて出ない。それでも彼は私の意志を汲み取り、繋げようとしているようだ。
(私は疲れました、ずっと戦い続けなければならないことに)
目を閉じると真っ暗な世界が広がる。その闇は心地良い。
「君は、みらいを変えるのだろう? さぁ」
目の前に差し出されたのを感じて、再び彼を確認する。差し出されたのは彼の左手だった。
「"遊星"、君の可能性にボクは賭けたい」
この手を差し出されたのは私ではない。
「だから、乗り越えていけ。ボクを」
撫でられていたのは私の頭ではない。
「ブルーノ……――!」
彼の声が聞こえる。
(とうとう、来るのですね)
彼は『彼』とは違うのだ。
そして、彼と『私』も。同じようで違う存在。
未来を変える。
たとえ独りになったとしても。
それが私の使命。
(チーム5D's……)
あの優しさが無くなったのは、当に昔のこと、だというのに。時々思い返しては虚無感に陥る。それも今日で最後――なのだろうか。