小ネタ集
□遊戯王
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「好きだ」
と言われて心が苦しくなる。
真剣にこちらを見て返答を待つ彼は緊張しているのか唇を引き締めていて表情が硬い。
(そんなのお前らしくないぜ)
いつもの彼は明るくデュエルのことしか考えていなくて、こんなことを言う様子は考えられなかった。これは偏見だったけれど。今の光景は考えられなかった。
違う。お前が愛するべき人は、オレじゃない。
ぎゅっと目を瞑って彼に背を向ける。
「すまないが、お前とは付き合えない」
「……あ」
吐息なような声が漏れていた。彼はその背中を凝視する。感じるそれがくるしくて、十代は顔を歪めた。
「十代」
切なそうに呼ぶ彼の声が心臓を握り潰すかのように締め付ける。痛いのはきっと彼も同じだろう。
「十代、……すまなかった」
完全に諦めたのだとわかる声。違うのだと声を張り上げて言いたかった。でもそれは出来ない。自分は臆病だ。傷つくのが怖いから拒絶する。
「なぁ十代、なんかあったら呼べよな。絶対助けに行くからさ」
"いつも通り"を装って彼は笑う。結局はこうなるのだとどこかで諦めがついていて、悔しさしか残らない。気持ちが悪い。
「じゃあな、十代」
「待ってくれ、言いたいことがあるんだ!」
そう言えるのは心の中だけだ。
遠ざかる足音に。心が叫んでいる。好きなんだ。お前が、好きだ。
でも、恐怖には勝てない。大人になっただなんて嘘っぱちだ。
溢れた涙は零れ落ちただけだった。それを拭うことも、恐怖で出来なかった。心の叫びを認めてしまうようで、怖いと思った。
最初っから諦めていた。だからこれも自業自得。
怖いと思った。
だから彼を拒絶した。
でも結局は後悔しか残らない。ならこの気持ちはどう叫べばよかったのだろう。
後悔先に立たず