小ネタ集

□HAPPY BIRTHDAY ―たくさんの人に感謝!―
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「これ、二人が作ったのか?」
 おれの言葉に、二人は可愛らしい笑みを浮かべた。
「そうだよ、ユーリ!」
 嬉しくて、目の前が曇る。慌てて滲んだ涙を拭うとおれは思いっきり腕の中のお姫様二人を抱きしめた。
「ありがとな、グレタ、ベアトリス」
 部屋の隅っこではヴォルフラムがコンラッドとなにやら話していた。こちらと目が合うとふん、と顔を逸らす。その横顔は誇らしげだった。グレタが親思いの娘に育って嬉しいのだろう。コンラッドも笑ってこちらに小さく手を振ってくれる。
「ねぇねぇ食べてみて」
 お姫様のお願いとあれば聞かないわけにはいかない。二人のあとげない笑顔に挟まれながら、きれいに作られたケーキにフォークを刺す。口に含むと甘いクリームと、甘酸っぱく酸味のある苺の味が広がった。
「……美味しい」
 おれの感想に二人は「やったぁ!」と笑いあう。
 会場に音楽が流れ始めた。それぞれの男女が組み合い、優雅なステップを踏み始める。彼女と初めて会ったときを思い出しながら、おれは二人に手を差し出した。
「お嬢さん、お手を拝借」
 しまった、これでは三本締め……。
 ベアトリスはくすっと笑って、おれの手をとった。グレタも空いてるほうのおれの手を取る。
「「こっちよ」」
 会場のど真ん中に走り出す。主役はやっぱ中央じゃないとということだろうか。
 真ん中からは会場がよく見える。二人と踊りながらも会場のなかにあの舞踏会で着ていたドレスを着たフリンを見つけた。彼女はやや恥ずかしそうに頭を下げる。また後で、と合図を送り、ぐるりと一回転。派手に着込んだドレスから惜しげもなく上腕二等筋をさらけ出してグウェンダルに絡むグリ江ちゃんも見つけた。グウェンダルは眉間に皺を刻みうんざりとした顔だ。こんな日に部下に絡まれて運が悪い。ヒスクライフさんは娘の姿を慈愛に満ちた眼差しで見守っていた。ギュンターはなにやら忙しそうにダカスコスに命じている。
 たくさんの人に囲まれて、おれは今日生まれてきたことを祝福してもらっているんだ。
 本当、こういうのって王様冥利につきるよな。
 ゆったりとした曲調に変わると、皆がくっつきゆらゆらと踊る。中には珍しい特徴性が見えるダンスを踊るカップルもいた。音楽が止まるとほうっと息を吐く。
「親父さんにどうだったか聞いてみな、ベアトリス」
「……はいっ」
 笑顔で駆け寄ってゆくベアトリスの後姿を見ながらグレタが声を弾ませて訊いた。
「お父様、グレタのダンスはどうだった?」
 赤茶の瞳を輝やかせて見上げるグレタの髪を撫でてやる。
「綺麗だったよ。さすがおれの自慢の娘」
 嬉しげなグレタを抱えあげて抱きしめてやる。ヒスクライフさんがベアトリスを抱えあげ抱きしめるのとほぼ同時だった。
 さらに豪華な料理や酒が大量に運ばれてくる。降誕際は夜が明けるまで終わりそうにない。


 ありがとう。
 こんなにも幸福な時間を、過ごせるのは皆のおかげだよ。



 本当に、有難う。









――HAPPY BIRTHDAY!――

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