03/15の日記

05:20
ヨハ十ちょっと長めの予定だったやつ
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※最初からクライマックス



 突如として飛び散ったガラスの破片。ヨハンが目を開けるとハネクリボー――Level.10がまばゆい光を持って十代の前に降り立っていた。一番驚いたのは十代だ。予想しなかったハネクリボーの行動に唖然としている。そのハネクリボーを見つめて、ユベルが十代の肩に寄り添い優しい声音で言った。
『ハネクリボーは君に死んでほしくなかったんだろうね』
「そうか……。ごめんな。有難う相棒」
 その言葉に十代は瞳を瞬かせ、顔を歪める。大事そうに、ゆっくりとハネクリボーの身体に触れると抱きしめた。心底嬉しそうにハネクリボーは涙を飛び散らせ頷く。それに優しく微笑んだ十代はやはり血だらけで、息をするのも辛そうだ。
「話が読めないんだけど」
 翔がそう言った瞬間、十代を呆然と見ていた男が声を出した。
「何故だ……」
 突然の出来事を受け止め切れないらしい。驚愕と動揺を隠しきれず、男の声は震えていた。その中には怒りが垣間見える。十代が鋭い目で男を見たのをヨハンは見逃さなかった。
「計画は成功するはずだったんだ! それなのに何故精霊ごときに邪魔をされ……全部台なしじゃないか!」
 叫んだ男は狂気に侵され醜い顔をしていた。自分の計画をハネクリボーたちに邪魔されたことに怒り狂い、周りのことさえ忘れ、十代に全ての怒りをぶつけようと荒々しく彼へと近付く。
「待て!」
 だが後から追いついたオブライエンがデュエルディスクからカードを男の足元へ射出しそれを食い止めた。
「ふざけるな、ふざけるな!」
 たたき付けるような叫び声は部屋中に響く。怒りに震える男は血眼になりながら叫び続けた。十代はあまりの煩さに耳を塞ぐ。
「あの子を蘇らせたかったのに……奏」
「たとえオレの力でも蘇らせることなんて不可能だ」
 ぽつり、と十代は呟いた。哀れみを含んだ声音だ。
 ヨハンは十代のもとへ走って身体を支えてやる。強く男を睨みつけるヨハンの服の袖を十代が握った。微かに手が震えている。
「大丈夫か」
「これくらい……げほっ」
 強がる十代だがすぐに咳込む。ヨハンが背中を摩りながら覗くと十代は涙を浮かべており焦点もやや合っていない。呼吸も乱れ辛そうだった。思った以上に堪えている。
 ヨハンは十代を早くこの場所から病院へ連れて行きたかったがデュエルは中断するわけにもいかない。ヨハンが中断しようとも男はそれを許す様子もない。
「ヨハン……このデュエル、オレも」
 それを察したのか否か、十代は声を絞りだしヨハンのデッキに触れた。「共に戦う」。そこまでは声が掠れて聞こえなかったが、意思は燃え上がり引き下がるような瞳でもない。ヨハンは逡巡したが説得のしようがなく頷いた。
「オレのターン!」
 このドローに全てが掛かっている。ヨハンは強く願う。この状況を覆せるカードを来ることを。
 重なった手が、カードを引く。十代の冷たい手がまるで力をくれるようだった。


――ターンエンド

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