05/23の日記
05:15
十代と遊星
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HEROが、彼の憧れ。それならば、オレにとっての"HERO"は。
「遊星」
自分の名前を呼ぶ柔らかな声に、重たい瞼を開ける。しばらく逆光で見えなかった姿がようやくしっかり見えた頃には彼は呆れたような表情でこちらを見ていた。
「こんなとこで寝て。風邪引くぞ?」
しょうがない奴だな、と息を吐く。どうやらオレはプログラムを作成している最中に寝てしまっていたらしかった。机のパソコンはスリープモードに入っており、オレの体はいつの間にかソファーに横たわっていて、その体にはブルーノの上着が掛けられていた。
「あ」
「たく、意外と夢中になりすぎるとこあるんだな。お前」
その声は聞き覚えのある声だった。ある、確実に。そしてそれは憧れの人の声で。諦めかけたとき、自分をつなぎ止めてくれた、奮い立たせてくれた声。
「じゅ、だいさ」
「久しぶりだな、遊星。いやお前はそうでもないかもだけど」
彼はあの時と変わらない、明るいあの姿と明るい声音で。にやりと挨拶をした。
「な、んで」
どうして、此処に。
寝起きで混乱するオレの顔を見て、彼、遊城十代は笑う。
「うん、ちょっと様子見に来ただけだぜ」
「はぁ」
人を引き寄せる笑い顔。それが何より彼らしいと頭の片隅でぼぅっと思う。まだ脳は覚醒しきっていないようだ。
「元気にしてるか?」
「オレは、元気ですよ」
オレの答に彼は少し目を見開いてそれからケタケタ笑い出す。
「そんな無理してるようじゃ、元気って言われても説得力ないぜ! 遊星」
そう言うとすぐに笑い顔を引っ込めてまた溜息を吐く。本気で彼は心配してくれているようだった。
「すみません」
「ん、わかればいいんじゃないか? すぐ直りそうにないけど」
からかうように笑う彼はオレの頭に手を置き数回撫でていく。年は同じぐらいに見えるというのにまるで子供を扱うような仕草。くすぐったいし、不思議な気分だ。こんな風に思うのは、彼ぐらいだと思う。
「しっかし」
ふと息を吐いて彼は辺りを見渡した。その瞳は輝いて、何かにわくわくしているようだ。
「本当にすごいな。遊星のD-ホイールは! こっちは誰のだ?」
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