06/17の日記
08:35
ジュリア+アーダルベルト
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彼女の髪は本当に綺麗な色をしている。まるで空を写したような髪は風に靡いて美しかった。
見られているのに気付いたのか彼女は友人が改良したという花から指先を放してこちらを向く。髪がふわりと宙に舞った。
「なぁに?」
困ったような表情で首を傾げると彼女は婚約者の返事を待った。目が見えない分、彼女は人の気配に敏感だ。きっとこちらが見惚れていただなんて言わなくてもわかっている。アーダルベルトはそういった気恥ずかしいことを言える性分ではないが時折彼女は見抜いているように笑うのだ。
「いや」
ジュリアはアーダルベルトの返事にクスッと笑ってアーダルベルトの唇を奪った。
「貴方って可愛い人」
そう言ってクスクス笑う彼女には堅いアーダルベルトも敵わない。お嬢様で上品だが拳法の達人である彼女に拳で挑んでも無駄であるように彼女の嬉しそうな表情にはいつも敵わなかった。
世話になっている侍女に花を贈るのだとかで連れ出された花畑には数々の花が咲き誇っている。それを一つ一つ確かめながら真剣に選ぶ彼女はどの花より美しいとアーダルベルトは思った。
「これなんてどうかしら? とてもいい香り」
彼女の選んだ花は深い青色の花びらで空を向いて凛とした雰囲気をしていた。誰かを彷彿させるような美しさ。
「……これは?」
「それはね、『大地立つコンラート』」
そう答える彼女は少しだけ目を細めた。彼の母親が彼を想像して花を改良したのだとジュリアは続ける。
「……そうか」
アーダルベルトは曖昧な相槌を打った。
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