Show Girl

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「皆さん本当にありがとうございました」

「私達もやっとこの苦しい生活から抜け出せます」


街の人達に囲まれ、溢れる程の歓喜の声が飛び交う
苦しかった十年を振り返る様に涙する者もいれば、これから来る未来を考え笑顔になる者もいる

長く続いた住人を苦しめていた闇ギルドは解散。
トップの敗北、残る手下も妖精の尻尾の活躍により片付けた

後は、評議員のお迎えが来たら纏めてロープで縛られた悪人達を差し出すだけ

住人達はこの街を救ってくれたヒーロー達に頭を下げ、礼の言葉を言うばかり


「ナツどこ行くの!?」

「全然喜べねえ」

「まま、待ってよナツー!」


そう言ってナツは輪の中から抜け出した
慌ててハッピーが後を追い掛ける
ルーシィはそんなナツの背中を見送るだけで次の声を掛けない
それは、ルーシィだけでなく他のメンバーも一緒
ナツの行動に連中は焦るが、ナツの一言に対して掛ける言葉が見付からない

それは一人欠けたメンバーを思って。
一緒に戦ったのだから、この勝利は一緒に喜んでこそ初めての勝利となり、依頼達成となる
だが、この場に居なければ何の意味もない

勿論住人達を助けられた事は何より喜ばしい
しかし、心から喜べないのは今もなお、必死で生死の境と闘う少年が居ないから

妖精の尻尾は誰一人、笑顔を作れない
それは、ツバサと一緒にまだ闘い続けているから


「すまない。仲間が大変なんだ…この場に水を差す様で悪いが私達は失礼させてもらうよ」

「すみません、気が利かず舞い上がってしまい」

「いや、構わない。仲間の容態が良くなるまでもう少し世話になるが構わないか?」

「勿論です!あの少年が元気になられましたら、改めてお礼をさせて下さい」

「…感謝する」


元気になる日など来るのだろうか?
不謹慎だが、一瞬だけ頭の中に過ぎった言葉

エルザは皆を代表し、街の長に告げる
住人達に取っては喜ぶべき事なのだから、大いに騒いで欲しい
だが、それと引き換えに仲間が危機なのも事実

俯くメンバーはエルザの言葉を最後に足を揃えてナツの去った方へ追い掛ける様に急いだ





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