Show Girl
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ずっと霧が掛かっていて思い出せなかった昔の記憶
ある日、霧が解けて全てを思い出せた
本当に優しくて大好きだったお母さんとお父さん
でもある事件をキッカケにお別れも言えないまま、二度と話せなくなってしまった
もう二度と会えないと思ったグレイ
今だからこそ良かったけど、死んだと聞かされた時は目の前が真っ暗になった
失ったモノは大きかった
だけど取り戻せたモノも大きかった
せっかく取り戻した私の親であり師匠である人
私はまた失うのか…?
「モモはいつもツバサの事を考えていた」
外の簡易テーブルに備え付けられた椅子に座るツバサに静かに声を掛けたのはシバだ
この短時間で泣き腫らした跡を作るツバサを見てシバは呆れた様に笑った
全てを察しているかのような笑みだった
「シバは知ってた…?」
「アイツは一種の親バカだ。どうやったらお前さんが笑うか、喜ぶか、どうやったら悲しまずに居られるか、自分の病気なんざ後回しだった」
ツバサに忘れられ、会えなくなっててしまうのはモモにとってそれは、悲しく悔いの残る事だった
だが、自分が死んだ後にまたツバサが笑わない子に戻ってしまったら…?
そっちの方が耐えられない
自分が何も出来なくなってしまった世界でツバサが暗闇に落ちてしまうなんて
何より一番悔いの残る事だ
「ツバサの記憶が戻っちまった時、モモはそりゃ凄く喜んださ。同時に凄く悲しんだ」
思い出してもらうと言うことは、ツバサを悲しませる事になるのだから…
「モモの一番の薬教えてやろーか?」
いつの間に居たのか、ムジが後ろに立っていた
「それはツバサちゃんの笑顔よ」
エリが肩に手を置いて、柔らかい笑みを見せた
「こう考えねえか?せっかく思い出したんだぞ、本当ならツバサはモモとお別れが出来なかったんだ。だけどな、今ならちゃんと送り出せるんだぞ」
ズイッとテーブルから身を乗り出したハルが無邪気に笑う
「そうだぞツバサ!逆に喜べ!」
テーブルにバンッとレトが手を付き、
「見送った後に一緒に泣いてやっから」
眉を垂れ下げたリアは既に泣きそうだったけど…
まだ朝方だと言うのに、何かを察して起きてきた連中
本当にいつの間にか、囲まれていたツバサは込み上げるモノが沢山あった
「俺は、」
連中は知っていた
モモが病気に侵されていることを
最初は戸惑いが無かった訳がない
ツバサ同様に慕っていた師匠が逝くなんて…
では残された時間をどう過ごす?
いつまでも泣いていたって仕方がない
限りある時間を笑顔で過ごそう
そう決めたのだ。
「モモと、モモと…ちゃんと笑ってお別れするよ…!」
昔のツバサは何処にも居ない。
皆の気持ちが伝わったのか、歯を食いしばって言ったツバサに連中は頷いた
いつもツバサの為を思って今まで生きてきた
血は繋がっていなくともモモにとってのツバサは娘だ
それはツバサにとっても同じコト
今度はツバサが恩返しを…親孝行をする番だ
「居たっ、ツバサ!」
「ルーシィ?」
「モモさんが、モモさんが!」
息を切らし叫ぶルーシィにツバサは考えずとも分かった
お別れは直ぐそこまで迫っていることに
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