Extra

□もしもの大掃除
1ページ/1ページ


「今年もあと少し!」

「一年ってのは早いな」

「つーことで、大掃除すんぞ」


リビングにて。
仁王立ちで拳を作り高く挙げ、いきなり張り切りだしたツバサにソファーに腰掛けタバコを吹かしながら観察

今年があと少しなのは分かった
だが、唐突に大掃除などと言われても全くやる気のない時に言われても重い腰は上がらない


「今からやんのかよ?」

「今やらなくていつすんだよ?」

「まだ半月あんだからギリギリまでいいじゃねえかよ」

「それは無理なお話ってヤツだ!」

「休みの日ぐらいゆっくりとだな、」

「たった今大掃除をしなくちゃいけない衝動に駆られてるから今からやるの〜」


どんな衝動だよ…

更に煙を吐き、脱力しまくった俺の腕を引っ張り無理やり起こそうとするツバサ
一年の終わりに大掃除をしようと言う気持ちは分かる
だからって今からやらなくてもいいじゃねえか


「グレイ」

「あぁ?」

「一緒に…やろ?」

「…………ッ、」


普段女のカケラもなければ、ギルドでは性別偽って男でいるツバサ
そんなヤツがたまに反則技を使うときがある

それが今だ。
小首を少しだけ傾げて上目遣いでお願いときた
表情はどこか切なげで…

俺はこのお願いに弱い。
たかが掃除の一つや二つ
腹立つ程に可愛くなりやがるこの瞬間にヤられるのは、俺の方…


「わ…わかったっての」

「ヨシ!やろー!!」


そんな可愛さも一瞬で終わり、両手を広げてどこから取り出したのか、エプロンやらバンダナやらを装着しだしたツバサ
俺の分もあるらしく渡され装着する

正にしてやられたと言う訳だ


――――


「次はグレイの部屋な」

「いいよ、自分でやるから」

「遠慮すんなって!二人でやった方が早いんだから」


リビングや水回りの掃除が一通り終わり、軽く昼休憩を挟む
残すところは各自の部屋のみ
グレイの部屋へと続く扉を開け入って行くツバサの背中を追い掛ける


「散らかってんな?まずは整理から〜」


そう言って雑誌や服が散乱する部屋をテキパキと纏め出す
そんなツバサを横目にグレイも適当に片付けを開始する

それから黙々と掃除を始めること数分、


「なんだコレー!?」


ツバサの雄叫びが部屋に響き渡った


「なん…あぁー!?」

「巨乳だらけ…」


目を見開き整理中に見つけた産物の雑誌をプルプルと手を震えさせて固まるツバサ
急いで取り上げ、背中の後ろに隠したグレイ


「巨乳が好きだったのか、」

「いや、コレはだな…」

「グレイがこんな雑誌持ってたなんて」

「待て!違うぞ?いや…だからな…」

「………コレは何?」


しどろもどろに弁解をしようと焦るグレイに更に追い討ちをかけるように何かを発見したツバサ
ベッド下に手を忍び込ませ口をあんぐりと開けた


「誰のブラジャー!?」

「あぁーー」


ストラップ部分を持ち、グレイの前で垂らす
先ほどの雑誌以上に取り乱すグレイにツバサの顔は歪んで行くばかり…


「あ…わ…ば…あぁッ!」

「セツメイモトム」


ツバサの手に持つブラジャーを慌てて取り、それも背中の後ろへ
目の据わったツバサが片言でグレイに聞けば冷や汗をダラダラと流した

言える訳がない…
ジュビアの置き土産だなんて…


「ん?コレは…?」

「もーやめてくれー!?」

「…パンツ?」


更に更にベッドの下から見つけた産物をつまみ上げグレイの前へ
俺終わった…
と、グレイの頭が真っ白になる


「ドチラサンノ?」

「ツバサさんこえーよ…」

「ドチラサンノ?」


笑っているが、目が笑っていないツバサ。
いっそのこと殺してくれと思うグレイ

そのパンツは…
ルーシィのだなんて口が避けても言えない…


「ふーん、グレイが変態ってことは知ってたけど」

「いや…あのな?」


今日は大掃除だった筈…
それが掃除所ではなくなった

腕を組み目を瞑るツバサの前に正座のグレイの姿


「いーよいーよ。グレイがとんでもない変態ってコトが分かったから」

「ツバサちゃん、落ち着いて俺の話をだな、」

「ツバサ君は何も見なかったコトにするから大丈夫だ」

「言い換える所が何とも言えねえ…」


最早、グレイに逆転のチャンスなど無い。
色々見られた後に言い訳すれば立場が更に悪くなるだけの状況
普通の女なら取り乱し泣き喚くか怒り狂うかと言うことになってもおかしく無い状況。
それをツバサは敢えての冷静

余計に怖くて仕方がない…


「すまん!謝る!今はツバサ一筋だ!許してくれ!」


手を床に着き、頭も床に着ける
土下座で謝るグレイ

‘今はツバサ一筋だ’のフレーズが全てを認めた瞬間だった。


「悪かった、俺が悪かった!何でもするから許してくれ、この通り!」

「…なんでも?」

「あぁ、なんでも!」


そうグレイが言えばニヤリと笑ったツバサ。
これから年明けまでにグレイはツバサの下僕となる…


「じゃー掃除再開!」

「ゆ、ゆるしてくれんのか?」

「えー?許す訳ないじゃーん」

「え…」

「取り敢えず掃除終わらしてから言い訳聞いてやるぞ」

「マジ…?」

「それにまだ何か出て来るかもしんないし」


立ち上がり掃除を再開させたツバサ
掃除と言うより、何かを探しているようにも見えるツバサにグレイは気が気では居られない

その後、ツバサとグレイの雄叫びは終始続くのだった


もしもの大掃除
(またパンツ!?)
(あ…)
(しかも男モン!?)
(そりゃ…ナツの…)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]