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□やっぱりオンナノコ
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ギャップと言うのは、時には物凄く可愛くなったり格好良くなったり。

とにかくギャップの威力は絶大だ


「うみゃいにゃあ〜!やっぴゃりみりゃにょごあんぎゃいちばゃんだ」


相変わらずのツバサは、口に食べ物をハムスター並みに含んで幸せそうに食べていた
本当にいつも美味しそうに食べてくれるツバサを見てミラも幸せそうに微笑む

これだけ美味しそうに食べてくれると作る側からすればとても嬉しい


「口ん中入れすぎだろ」

「うみゃいからふぉーくがとみゃらん!」

「あー」


カウンターに座り食すツバサの隣にグレイが呆れた様に腰掛けた

モグモグと止まらない口を動かすツバサに俺にもくれと口を開けたグレイにフォークに刺さった肉を食べさせてあげる

あまりにも普通過ぎるやり取り
以前はコレで気付かないヤキモチや照れやらと、‘あげる行為’なんて出来なかった

これも二人の距離が縮まった証拠かな?と、二人の些細な変化にミラはまた微笑んだ


「所でなんか今日はみんな慌ただしいけどなんかあんの?」

「んぁ?あぁ、ツバサは今年が初めてだな」

「ん?何が初めて?」

「今日は、年に一回のなつま「ちょっと退いてー!」うォッ!?」


ツバサの問い掛けに答えようとしたグレイは、最後まで言い終える事無くルーシィにより遮られた

ついでにツバサから離すように掌で顔をグイッと押されて間にルーシィが割り込んだ


「グレイはツバサの半径5メートル以内に進入禁止!」

「それじゃ何も出来ねえじゃねーか!」

「何もしなくていいの!てかするな!」


キッとグレイを睨むルーシィ
相変わらずツバサが大好きなルーシィは、グレイに色んな意味で負けた事を未だに根に持っていたり…

そんな事を知ってか知らずか、突然現れ驚いたツバサは、取り敢えずルーシィにもフォークに刺さった肉を差し出してみた


「美味しい〜!って、こんな事してる場合じゃないわ!時間が無い、行くわよツバサ!」

「えっ…ちょっ、まだ牛が皿に残ってる〜!!」


突然現れたかと思いきや、ツバサの手を引き足早に去って行ったルーシィ

意味が分からないグレイは、残された皿の上の牛を食べる


「今日は夜が楽しみね、グレイ」


特に追い掛ける訳でもなく、残り物の肉を食べるグレイに水を差し出しながら意味深な笑みでミラが言う

まあ、確かに楽しみと言えば楽しみだか…

ツバサにはルーシィに遮られ言えなかったが、今日は夏祭りだ。
毎年の事なので何回目かになる訳だが、ミラの意味深な笑顔が何とも気になるところだ

何かあったけか?と考えても特に思い当たる節も無かった


――――


「な、なんだ?みんな揃って怖いんですけどー?」


引っ張り出され連れて来られたのはルーシィ宅。

連れて来たわよー!と、家に入り言ったルーシィの声に家で留守番していたエルザ、ジュビア、レビィ、カナは一斉に振り返りツバサに駆け寄った

目をぱちくりさせ、ジーッと凝視されるツバサは、無意味にも冷や汗が背中に流れた


「やはり白だな」

「そーだね、私もツバサを見て白が良いと思ったわ」


顎に手を置き上から下まで見たエルザに賛成したのは、酒瓶を片手に持ったカナ


「ツバサ今日は可愛くなろーねっ!」

「ジュビアもツバサ様の為に一肌脱ぎます!」


レビィがチークを片手にニッコリ微笑めば、その隣で拳を握ったジュビアが力強く言う

何が何だかさっぱりな訳で、更に目をぱちくりとさせたツバサの服の裾を掴んだルーシィは、


「早速取り掛かるわよー!」

「えー!?ちょっ、ルーシィ!?」


ぎゃあああ!?と、されるがままに叫んだツバサは、ルーシィに上を脱がされ、エルザに下をズリ下ろされる

あっと言う間に下着姿のツバサが出来上がった


「俺を取って食ったって美味しくねえぞ!?一体何がどうなって、パン一ブラ一にされてんだよ!?」


破廉恥だー!と、右手で上を左手で下を隠す意外と照れ屋なツバサは状況についていけない


「言わなかったけ?浴衣を着せてあげようと思って」

「聞いてねえッ!」


顔を真っ赤にして言うツバサにルーシィは軽く謝った


「ところでなんで浴衣?」

「今日は夏祭りの日なの、せっかく女の子なんだからツバサにも浴衣を着せてあげようってみんなで話してたんだ」


ツバサの質問にレビィが答える
そう言えば、先ほどグレイが何かを言いかけていた事を思い出し、コレが言いたかったのかと一人納得

皆に嘘をついていたコトを打ち明けてからも特に変わった所もなく今まで通りに過ごしてきたツバサ
変わったと言えば、喋りが男も女も混じっているぐらいか
女でしたー!と打ち明けたからと言って、服装も別にスカートなんて見たこともなく。

本当に今まで通りのツバサ

だが、今日はお祭りだ
年に一回の大きな行事、女の子の特権、可愛い浴衣を着てオシャレん思う存分しようじゃないか


「ハイ、かんせーい!」


ルーシィが最後の仕上げに頭の上に髪飾りを付けた

そんな訳で今に至る
たまには、可愛くオシャレしたツバサを…と言うことで、片っ端からツバサに似合いそうな浴衣をかき集め、メイク道具一式揃えてルーシィの家に集結した女性陣達


「化けたね〜ツバサ!」

「やはり白が似合っているな」

「ツバサ可愛い〜!ちゃんと女の子だったんだね」


意図が分かった所で5人からされるがままになったツバサは、髪はアップにされマスカラでパッチリな瞳になり、頬をピンクに染め、白の浴衣に身を包んだ妖精の尻尾に入った今日までで、一番女の子らしいツバサが出来上がった。

出来上がったツバサにカナとエルザとレビィは頷き合い満足な笑みを浮かべる


「ハッ…!ツバサ様がこんなに可愛く変身した姿をグレイ様が見たら…あぁ、でもやっぱりツバサ様は好きだし…でもでも…最強の恋敵…!?」

「少しだけその気持ちが分かるわ、ジュビア」


大変身を遂げたツバサを見て、ジュビアは妄想に妄想を膨らましてブツブツと
そんなジュビアにルーシィは溜め息をつきながら肩を叩いた


――――


「…みんなドコ行った?ルーシィ?エルザーみんなー!?」


用意も無事終わり、連中も夏らしい浴衣に身を包んだ所でマグノリアの街へと繰り出した

既に祭りは始まっていて、人混みに紛れて初っ端からはぐれると言う失態をおかしてしまう


「お、ナツ…って…ナツー!?」


知り合いも居ない人混みで心細くなって来た頃、ピンクの頭を目立たせるナツを見つける
だが、見つけたと同時に人の波に飲まれてナツが豆粒になっていく

その頃ナツは、ツバサらしき声に呼ばれた気がしたので振り返ったが、影も形も無かったので気にせずわたあめにかぶりついていた

慣れない浴衣に慣れない下駄。
人に飲まれてついには転びそうになった所で腕を掴まれた


「大丈夫か?」

「あ、」

「やっぱツバサ……可愛いな」


飲まれた波から助け出してくれたグレイは、ツバサの見慣れない姿に驚き素直に出た言葉を口にした

普段は男装からの名残で男っ気しかないが、今はただの女の子だ
浴衣姿で綺麗にアップされた髪と化粧
滅多に拝めないレアなツバサだ


「ツバサ?どうし、」

「グレイー!」


固まるツバサに首を傾げて問い掛けようとした所でツバサに抱きつかれる
正確には泣きつかれる

慣れない事尽くしでパニックを起こしていたので、グレイに会えての安心感から

何だこの可愛い生き物は…!
と、グレイは心の中で心底思った

公衆の面前で…
いわゆるバカップルと言う二人だった


「ツバサ腹減ってんだろ?」

「うん!減った!安心したらグーグー言い出してきた!」


落ち着いてきた所で可愛いツバサも終わり、着飾ってもツバサはツバサな訳で食に走る気満々だ


「はぐれんなよ?」


何を食べるかワクワクしながら考えるツバサにグレイは右手を差し出す
またどっかの誰かさんが迷子にならないように

グレイと差し出された右手を交互に見たツバサは恥ずかしそうに手を重ねる

これからも二人の手が離れることはないだろう


やっぱりオンナノコ
(いつもこんぐれえ素直だと可愛いのに)
(なんか言ったー?)
(あ?ツバサが可愛いってな)
(……し、しってる!)



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