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□BATH GIRL!?
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一つ屋根の下
広くもない家なのだから、同じ場所で遭遇するコトなんて何も珍しい事ではない

それが例え風呂場だろうと例外では無いのだ


「………え?」


こんなハプニングは一緒に住んでいるのだから無い方が逆に凄いだろう

そんなツバサは、出くわしてしまったのだ
風呂から上がった脱衣所で同居人のグレイと


「………覗き魔?」

「あ…居たんかよ……わ、悪ィ」


数テンポ遅れてやっと言葉を出せたツバサは冷静に聞いてみる
開けてしまったグレイも叫び散らされないだけマシか此方も冷静に謝ってみる

幸いな事に下は履いていて、上はブラ姿で髪を肩に掛けていたバスタオルで拭いている所での出来事だったので、まだお互いに幾分かの冷静を保っていられたのかもしれない


「悪いと思ってんなら、今すぐ閉めてくれると助かるんですけどー」

「そうだよな、すまねえ」


両者ピタリと止まったまた一歩も動かず会話する

これが未だにグレイに正体がバレていなかったら双方ともに発狂ものだ

バレたー!?と慌てるツバサと、男に胸があるー!?と驚くグレイの姿が目に浮かぶ


「…オイ」

「んあ?」

「んあ?じゃねえ!早く閉めろバカヤロー!!」


閉めろと言っているのに扉に手を掛けたまま動かないグレイに催促する

グレイも一応男だ。
こんなツバサの姿を見て見惚れている…と言うのが似合うだろう
ボケッと口を開けてツバサから目を離せない
性格には胸のあたり、と補足を付けておこう

そして遅かれながらツバサは今の状況が大変恥ずかしい状況にあるコトを今更ながらに思い、


「ぎゃぁあああああ!!!」


かなり今更過ぎの遅過ぎなこのタイミングで見られたー的な奇声をあげだす


「うわッ!?すすす、すまねえ!」


その声に驚いたグレイも慌てて扉を閉める

順序のおかしい二人は、本当に今更な事で頬を赤らめた


「あーもう!風呂入ったのにまた汗かいた」


恥ずかしさを紛らわす為かツバサはブツブツ言いながら髪を拭く手を再開させる

鏡に映る自身の頬は真っ赤になっていた
その熱はお風呂の余韻とグレイに見られた恥ずかしさもどちらも混じっているだろう

さっさと服を着て夜風にでも当たろう、と上着に手を掛けると、


「んなッ!?」


一度閉まった扉がまた勢い良く開いてグレイが入ってきた


「オマッ、変態なにしに…」

「ちょっと黙ってろ」


ズカズカと目の前までやって来たグレイにツバサは掴んだ服で咄嗟に上を隠す


「残ってんだな」


低く発したグレイは、ある一点を見つめた

胸を隠した服の隙間から腹部が見える
そこから覗くのは大きな傷跡


「グレイ?」

「ごめんなツバサ。今となっちゃ後悔しかねえ」


グレイは去り際に見たのだ
ツバサの異変に気付いていたにも拘わらず、一生残る傷跡を付けさせてしまった事
自分が着いていながら大きな傷を…

傷口は綺麗に塞がっているが、鮮明に残る大きな傷跡をグレイは見た


「な、なんだよグレイー!なんでグレイが責任感じてんの?言ったでしょ、コレは男の勲章だってさ」


今の状況がどうのこうのと慌てているのが逆におかしい程に先ほどのグレイとは打って変わった

そう言えば、あの一戦で付けた傷跡を見せたのは初めてだったな


「俺は全然気にしてな、いし…!?」


話の途中で視界は真っ暗になり、頭は真っ白になる。

何も着ていない背中から少しひんやりとした手の感触を感じる


「ツバサは分かってねえ」

「…へ?」

「ツバサは女だろ」


いくら男装していたとはいえ、細い小さな身体は、どうひっくり返っても女の子なんだ

せめて自分の前では、無駄な強がりなんてしなくていいんだ


「グレイ、」

「ツバサは女。分かったか?ちょっとくらい俺に格好つけさせろよ?次は俺が守ってやる」


抱き締める腕に力を込めたグレイは、ツバサの頭を自分の胸に押し付けながら言う

何だか急に男らしくなったグレイにツバサの胸はドキドキと煩く鳴る
身体もジワジワと熱くなる

だが、素直に嬉しい


「うん、しっかり守ってよね」


そう言って、胸の前で固まっていた手をグレイの腰に回す

素直に可愛く女の子になれるのは、好きな人の前だからだろう


「でももうちょっと欲しいよな」

「なにが?」

「膨らみがよォ」


密着した身体からグレイが視線を下に向ける

ツバサの腕はグレイの腰に回っている
なので当たり前に胸を隠していた服はパサリと下に落ちている
ブラ一枚で隠れた胸を見ながら変態グレイが発動する


「こぉんの…!ド変態がァアアア!!」

「冗談だろ、ジョーダン!」

「もー離れろグレイ!変態バカボケ!つーか出て行ったくせになに戻って来てんだよ!?」


そうなれば、ツバサはいつものツバサになる

ブラ一なんて気にしない。
今はこの目の前の変態をぶっ飛ばすだけだ


「出て行けバカヤローー!!」


渾身の膝蹴りをグレイの鳩尾にお見舞い。
痛さで手を離したグレイにグーパンチで脱衣場から追い出した

ドキドキしたりイライラしたりハラハラしたり…
無駄に汗をかいたツバサは、もう一度風呂に入り直そうと思った

ふと見た自分の脇腹の傷跡。
それを見てツバサは、困った様に笑って浴場へと足を踏み入れた


BATH GIRL!?
(やっぱツバサは女じゃねえッ!男だ男!)
(うるさいぞグレイー!じゃあ男と風呂入るか、来れば?)
(…マジか!?いきなり風呂…か?)
(冗談だ、ジョーダン!って本気でくんなよ変態!?)



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