Present

□恋しくて恋しくて仕方ない
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『グレイなんか…もう嫌いっ!』



あの時、何故あんなことを言ってしまったんだろう。
少しケンカしたぐらいで…
しかも、ケンカの理由はほんの些細なこと。
それぐらいで腹を立てている自分に嫌気が差す。
その数日後、グレイがジュビアちゃんと付き合い始めたという噂を耳にした。
確かに、二人でいるところをよく見かけるし、仲がいいんだなと前々から思っていた。
はずなのに…いつも以上にイライラする。



「ナナシチャンー!そんな難しい顔してどうしたの?」


カウンター越しにミラさんが声をかけてくれた。


「え?いや…何でもないです…」

「ふーんそう…あ!そうだ!」


「暇ならこれ裏に運んできて!」という言葉と共に降りてきたのは、ずっしりと荷物が入っているであろう木箱。
とびきりのスマイルでミラさんはわたしの目の前から消えた。
きっと、反抗は許さないと言う意味なのだろう。
とにかく、重たい荷物を持ちながら裏手へ。


しっかし、重たいな…これ…








*******




ドンッ、と荷物を下に下ろした。
めったに人の来ない裏手は正直静かで怖い。


「よぉ…」

「っ!うわぁっ!」


びっくりし過ぎて後ろを振り向けば、グレイが気まずそうな顔をして立っていた。



「んな驚くかよ…」

「だ、だって…」


チーン。
そんな効果音が似合うような沈黙が続いた。


「ぢ、ぢゃあわたしもういくね…」


グレイの横を通りすぎようとした刹那、左腕がガッカリと捕まれた。
ブンブン振り回しても、引っ張ってもグレイの手は離れない。


「ちょっと、離してよ」

「ヤダ…」

「ヤダって…アンタねー」

「もう、離さねぇよ…」


その瞬間、感じたのは、グレイの体温。
温かくて、安心する。
それによって、わたしはグレイに抱きつかれていることを実感した。


「グレイ離せって!」

「だから、離さねぇって言っただろ」

「言ったけど…そういうのは好きな子にするよね普通」

「だから好きな子にしてんだろ」


その言葉に疑問符を浮かべた。
ちょっと待てよ。
グレイが好きな子にしてるってことは、グレイの好きな子はわたしでいいってこと?


「ええっ!グレイの好きな子ってわたしでいいのっ!!!!!??」

「ああ、もう、うるせぇな!」


そう言いながら、グレイは益々腕の力を強めた。
苦しいけど、嬉しさの方が断然勝っていた。


「ナナシチャンが好きなんだよ」


耳元で囁かれた言葉に不覚にもドキッとした。
だってそうでしょう?
好きな人に告白されて、ときめかない女の子が何処にいる?


「わたしも…」


「好きだよ」。
そう囁いた瞬間、グレイはいっそう腕の力を強めた。わたしもグレイの背中に手を回し、腕に力を入れた。ケンカなんかしてたことも忘れて、ただ、グレイの体温を感じていた。





恋しくて恋しくて仕方ない


(本当は大好きって言いたかったんだよ)



END


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