Extra Joyful

□寒さ凌ぎ隊!
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「さーむーいー!!」

「さーむーいー!!ってミサカはミサカはトモの真似をしてみたり」


部屋の隅で仲良く肩を寄せ合いブルブルと震えるトモと打ち止め。

毛布をすっぽりと頭から被り、抱き合う形で密かな温もりに身を縮こまらせる


「よよよみかわわ…だだだんぼー」

「明日までの辛抱じゃん?」

「よよよしかわわ…こここたつー」

「そんな物は元々存在してないでしょ」

「トモが寒さでおかしくなってるってミサカはミサカは…ミサカもおかしくなるよ!」


少々、大袈裟な二人に溜め息を吐く大人二人。

只今絶賛暖房故障中の黄泉川宅
業者が直しに来るのは明日
と言うことは、今日一日は寒さに耐えなくてはならないと言うこと
確かに冷えて寒い事は寒いのだが、今からそんな寒がっていては冬本番になったらどうするんだ?と思う


「お風呂にダイビングしたいトコだけど、上がったらまた寒くなるから嫌だ〜」

「今日はお風呂に浸かりながら寝よう!ってミサカはミサカは提案してみる」

「それ賛成!」

「…俺も混ぜろ」


正直、生身の身体で冬を過ごすのは八年ぶりのトモ
ずっと透明人間な生活を送っていたので暑いも寒いもなんて事無かったのだ

八年ぶりの寒さを体験しているトモは普通の人より敏感になっている模様

だが寒さを初めて体験する者、約一名
珍しく乗っかって来た一方通行の発言にトモと打ち止めは目を丸くした


「喋らないと思ったら実は一緒にブルブル震えてる仲間だったの!?」

「アナタのノッかりにビックリ!ってミサカはミサカは小刻みに震えるアナタをつついてみる」

「一緒にすンな」


部屋の隅からソファーに座る一方通行の前へと即座に移動したトモと打ち止め
寒さに堪えきれなくなった身を少しだけ小さくする一方通行の姿は実に笑えるものがあったりする


「最強も寒さには勝てないってね〜じゃ、みんなで行こう!今日の寝床へ!」

「うわーい!ババンババンバンバン歌おうって、ミサカはミサカはネットワークから仕入れた歌を歌ってみたり」

「しょォもねェ情報仕入れてンじゃねェぞ。かったりィけど今日は付き合ってやンよ」


風呂場へ向かう気満々のトモと打ち止め
何だかんだ言いながらも実は一番早く風呂へと向かいたい一方通行
一方通行も寒さでおかしくなっている一人
普段なら絶対に有り得ないだろう行動に保護者二人は、少し面白い光景に呆れた笑みを見せる

だが、お風呂で寝るなんて普通に考えてバカな考えを起こす子供達は勿論止めるに決まっている


「そんな事したら風邪引くに決まってんじゃん?」

「却下ね」


黄泉川と芳川に止められたトモと打ち止めは、ピタリと動きを止めた
泣き出してしまいそうな勢いで眉毛を垂れ下げる二人に当然だな、とやっと冷静さが戻って来た一方通行

それにぶーぶー言うトモと打ち止めは無視無視。


「ハイハイ、次考えるじゃーん」

「お風呂は寝る前に入りなさい」


ソファーに座る一方通行の前で床に手を着きあからさまに落胆する二人

言い残して台所へと消えて行った黄泉川と芳川は、今日の晩御飯は鍋にしようと決める
鍋と決めたのに、炊飯器を取り出す黄泉川に芳川は言葉を無くした

一体、炊飯器でどうやって鍋をする気なのだと…


「次の考えなんてない…後は凍え死ぬだけだ…」

「トモ今までありがとう、ってミサカはミサカは最後の言葉を残してみたり」

「アホか」


サスペンスやアニメを見すぎか。
または漫画を読みすぎか。

唐突に始まったミニコントに一方通行はチョップをかます
それにいたぁい…!と声が両方からあがる


「あっ!良いこと思い付いたよミサカ〜」

「なになに?ってミサカはミサカはトモに耳を傾けてみる」

「どォせロクな事じゃァねェンだろ」


毛布をすっぽりと被って身を隠し、一方通行に聞こえない様にコソコソと話す
毛布が少しの揺れを作り、呆れた表情でそれを見る白い彼

少し経ってから話は終わったのか勢い良く毛布から顔を出したトモと打ち止めは満面の笑みで一方通行を見た


絶対に下らない事を考えているに違いない
笑顔を貼り付けた二人にそう思った


「なンだァ?怪人クソ毛布共」

「今から可愛い可愛いミサカちゃんとトモちゃんの怪人クソ毛布コンビが言うから何も言わずにやってね〜?」

「オイ、余計なモン付いてンぞ」

「可愛いは必須!ハイ、じゃぁまずは両腕を広げる!」


意味深な言葉を吐くトモに一方通行は、面倒臭そうに渋々と両腕を広げる


「オォ!アナタがちゃんと従ってるってミサカはミサカは驚いてみる!そんなアナタに毛布をバサリッ!」

「アァ?暖めてくれてアリガトォってかァ?」

「どういたしまして!ってミサカはミサカは、あぁっダメダメ!手はコウモリさんのまま〜」


打ち止めがトモとくるまっていた毛布を一方通行にかける。
有り難く身を縮こまらせようとする一方通行に止めの声を入れる
両手を広げた一方通行にフワリと掛かった毛布が羽を広げたコウモリに見えた事から打ち止めはそう言った
止められた一方通行は腕をダルそうに広げたままにした


「準備完了!ミサカさん突撃ね〜」

「はーい!ってミサカはミサカはアナタの隣に移動してみたり」

「…ウゼェ」

「ウザくないウザくなーい!じゃ一方通行、私とミサカの肩の上に腕を下ろしてちょーだいよ」


何をするかと思いきや、両隣の空いたスペースに身を縮めて座り出す
トモの声に従って両腕を肩の上に下ろす

そこには、仲良く三人で毛布にくるまる図の出来上がり
端から見れば、白い彼が二人を暖めてあげているようだ


「みんなで入れば寒くないねってミサカはミサカはアナタに密着してみる」

「一方通行も暖かい!ミサカと私も暖かい!一石二鳥…三鳥ね」

「…ウゼェ」


一方通行に身体をピッタリとくっつけて寒さを凌ぐ二人
最終的にやりたかった事が分かった彼はウザイと言いつつもしっかりとトモと打ち止めを毛布でくるむ

そんな彼の些細な行動が嬉しくなり、トモは一方通行の首に巻き付いた


「人肌はやっぱり暖かいよね」

「テメェは顔を擦り寄せてンじゃねェよ」

「モウ、テレヤサンメッ!」

「オーケー、その顔に噛み付いてやっから待ってなァ」


片言な所が異様に腹が立つ。

視線は前を向いたまま攻撃体制へと入る
能力が自由に使えない彼にとっての精一杯の攻撃が噛み付き。
それが面白過ぎてトモは静かにプッと吹き出した


「ズルい二人だけー!ってミサカはミサカもアナタの首にダーイブ!」

「クソガキ、この距離でンな事しやがったら分かってンよなァ?」

「軽いお茶目なジョークは聞き流すものだよ?ってミサカはミサカは大人しく首にダイブしてみる」

「テメェのはジョークに聞こえねェンだっつゥの」


ポフッと音を立て、中腰で打ち止めも一方通行の首に巻き着き顔をすりよせる

俺は何をやってるんだ、とつくづく思う
一つの毛布で一緒にくるまり、と言うかくるんであげている
そして首に左右から巻き付かれ両頬から伝わるトモと打ち止めの温もり

この異様な光景も寒さのせいか…


「お子様達〜暖かいお鍋で身体を暖めるじゃんよ」

「随分仲良しね?あなた達」

「おっ、良い方法考えたじゃん」


台所から出て来た黄泉川と芳川は毛布にくるまる三人を見て微笑んだ
そんな保護者二人にでしょーと、キャッキャと騒ぐトモと打ち止めに何とも微妙な顔をする一方通行。

寒い冬もみんなで身体を寄せれば大丈夫
トモは、小さな幸せを噛み締めた


「オイ、持ってるモンおかしィだろ!?」


鍋だと言っているのに何故か炊飯器を持つ黄泉川の手に一方通行は眉を吊り上げた

そんな今日も元気な黄泉川家のとある日。


寒さ凌ぎ隊!
(温そうじゃん、あたしも混ぜるじゃんよ)
(寒さ凌ぎ隊へようこそ〜)
(そんな名前があったの?ってミサカはミサカは驚いてみる)
(貴方もやれば出来るじゃない?)
(…寒さ凌ぎ隊だからなァ)



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