Extra Joyful

□それでも気分は女子高生です
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ズルズルと腕を引っ張られ街を歩く
家には誰も居なかったのでお昼ご飯を食べに出た二人


「たまご無いダメだー」

「珈琲がねェ死ね」


黄泉川、芳川に打ち止めは出掛けたらしく、起きると残された一方通行とトモだけだった
タイミング良く同じ時間帯に起床し寝ぼけた二人は取り敢えず冷蔵庫に直行


「ひよこが一匹も居ません」

「誰だァ?俺の飲みやがったンは」


冷蔵庫を両側から覗き込み漁った結果カラッポ
三人が居ないと言うことは、たぶんカラッポ冷蔵庫の補充の為に買い出しに出たのだろう


「置いて行くなんてヒドーイ!」

「自業自得だろ」

「アクセラも置いて行かれて寂しいって思ってるくせに」

「バカ言え」

「たまごも珈琲も黄泉川も芳川もミサカも居ないし、どーしよ!?」

「寝る」


何考えてんのー、と一方通行の肩を持ち左右に激しく揺さぶる

寝起き時、最強は最弱らしい。
頭では止める為にチョップの一つや二つお見舞いしてやりたいのだが、身体は思うように動かずされるがままに左右に揺れるだけ


「わかったーッ!」

「どォせボケた発言しやがるンだろ」

「ランチに行こうランチ!気分は花の女子高生で可愛くランチ食べ行こ〜」

「やっぱボケじゃねェか」


瞳をキラキラとさせて言うトモに呆れかえる一方通行
そんな訳で眠いがお腹も空いているのも事実であり一方通行はトモのボケに付き合うことに


「百合子ちゃん早く!」

「オイ誰だあ?そりゃァ」


そんな訳で外に繰り出す
前を先に歩くトモが振り返り呼ぶ
どっから出て来たのか一方通行を百合子呼ばわりするトモ

聞いたことも呼ばれたことも無い名前に一方通行は眉を吊り上げた


「女子高生のランチって何食べるんだろ?」

「知るか」

「百合子ちゃん何食べたい?」

「黙れカス」

「設定は花の女子高生でランチだから名前もっぽくしなきゃでしょ?だから百合子ちゃん、名字は…鈴科ってとこでどーよ?」


前を歩いていたトモが隣に移動しキャピキャピしながら腕を組む
相変わらず目はキラキラとさせてトモなりに考えた一方通行の名前を発表
あくまでも女子高生設定で話を進めているらしい
何処か物凄く不愉快を覚えた一方通行は少し下に居るトモを無言でガンを飛ばし、三発連続チョップを落とす


「ドブのボケ学生」

「花の女子高生!」

「大体オマエ高校生もクソも歳が足りてねェだろォが」

「歳なんてその気になれば大丈夫さッ!」


何が大丈夫なのか…
バカなトモは放って置き、歩く
隣で必死になって’設定’を話すトモの話を右から左へと流す

そんな時、バタリと前方で何かが倒れた
トモは話すのに夢中で全く気付いていないが、彼は気付いた

面倒なモノには関わらないのが一番だ。


「オイ、トモ」

「ハイ、百合子ちゃん!」

「黙って着いて来い」

「何処に着いて来い?」


足を止めた一方通行の話を聞いているのかいないのか。
トモは視線だけを一方通行へと向け、足は止めず前進
そんなトモに舌打ちをし、


「そっちじゃねェ、イイからナニも見ずに来いッつってンだろォが」

「あー花の女子高生っぽいぽいッ!」


首根っこを引っ張り足を止め、反転したトモの肩をガッチリと組んだ
珍しい行動に出た一方通行にトモは楽しそうにパチパチと拍手した

来た道を引き返し、特に目的地の決まっていない店探しは此処で終止符を打つ事に


「お…か…へっ…」

「なんか聞こえた?」

「無視無視」


何か声が聞こえ、足を止めようとしたトモは肩を組まれている為、一方通行によって歩かされる


「…おなかへった」

「また聞こえた?」

「ムシムシ」


先程より正確に聞こえた声
それでも足を止める気は無かったが、


「おなかへったって言ってるんだよ?」

「……ッ!?」

「あっ、インデックスだー」


突然現れた白いシスターが一方通行の肩に張り付いていた
首に手を回し、でろーんとぶら下がっていた
心底驚いた一方通行は、必然的に足を止める事となった


――――


(なンだってンだァ?)


ストローに口を付け、シェイクをちぅーッと一口
何とも似合わない姿の一方通行

花の女子高生でランチ。
トモが頻りに口にしていた本日の設定とやら…

別にその設定に乗ってやる気はサラサラない
勝手に楽しめばいいし、勝手に騒がしとけばいい


「とうまがまた居なくなっちゃったんだよ」

「ご飯当番なのにご飯も用意しないで出て行くなんてインデックスかわいそ」


では質問だ
その設定の中に白い大食いシスターを拾って一緒にランチ…
このプランは組み込まれていたのか?


「でも出会ったのも何かの縁ってね〜!一緒にランチタイム満喫しよー」


答えはNOだ。
この状況も何もかもたまたまが重なったに過ぎない

両手にハンバーガーを持ち幸せそうに頬張るインデックスを見ながらもう一口シェイクを口に運んだ

そんな訳で現在ファーストフード店でランチ中。


「二度も助けてくれるなんて、アナタって本当に良い人なんだよ」

「張り付いて離れなかったンだろォが、オマエが」


神に代わってお礼を〜、と如何にもシスターっぽい動作でお礼をしだしたインデックス
アレだ、アーメンってヤツだ。

チッと舌打ちを残した一方通行は視線をそらし気付いた
隣から熱い視線を送られていることに


「ちょっと百合子ちゃん!」

「…あン?」


眉をへの字に曲げたトモと目が合う
名前にツッコむのもそろそろ疲れてきた。
さて、トモはどんなボケた発言をするのだろうか?


「私を置いてインデックスとご飯なんてセコい!」


食い付いた所はそこか…
プリプリ怒るトモに一方通行は自分の持つハンバーガーをトモの口に押し込み黙らせた


「コレうまぁッ!」


単純なトモの意識は口の中のハンバーガーへと向く

やれやれと、この状況に諦めて自分も食うかと思い口を開けると向の席に座るインデックスと目が合う

食べるに食べられない、視線が気になる


「なンだ?さっさと食っちまえよ」

「ねーねー、ゆりこ」

「あァ!?」


トモの所為で間違った名前を覚えられる
そして前から一方通行をガン見するインデックスは、


「私も食べたいかも」

「…ナニをだ?」

「それ」


一方通行の手に持つハンバーガーを指さ
両手にハンバーガーを持っているにも拘わらずまだ欲しいと言うのか…

ジーッと見つめられ、一方通行はインデックスとハンバーガーを交互に見た
熱い視線は反れる事なく注がれ続ける

全く自分は本当に何をやっているんだろうと、溜め息を吐き手に持つハンバーガーをインデックスへとズイッと差し出すと、


「………ッ!?」

「こりぇもぉいひぃんだゃにょ!」


手まで一緒に食べやがった…


「ふざけンなッ!?」


空いた反対の手でチョップを落としインデックスを離す
チョップ等気にもせず、頂いたハンバーガーを満足気に食べるインデックス

そうして彼の手にはハンバーガーは残らず、インデックスの涎だけが残った


「オマエ、ワタシにもくれなンてボケた発言すンじゃねェぞ」

「まだ何も言ってないのにー」


忌々しそうに手拭きで涎を拭く一方通行は、またもやトモからの視線を感じた
何か言う前に先にトモを止める

やっぱり当たっていたらしく、ぶーたれるトモにいつものチョップではなく、頬を思いっ切り抓ってやった。

誰が二度も手を食われる羽目になってやるものか…


「まだ食べたりないかも」

「私も百合子ちゃんと一緒のシェイク飲みたいな」


お金寄越せな瞳を二人から受け、本日盛大な溜め息を零す

 …今日は一体何の日だ?


「……ハンバーガーも追加だクソが」


札を取り出しトモに渡す
ついでにインデックスに食べられて無くなったハンバーガーも頼む

嬉しそうに買いに走って行った二人にチッと舌打ちを鳴らした

お守りをしている気持ちになった親御さん…
この日、一方通行の疲れる一日になったのは言うまでもない。


それでも気分は女子高生です
(ハイ、百合子ちゃんポテトあーん!)
(ナニがあーンだ)
(素直じゃないな?じゃ、インデックスあーん)
(ポテトちょー美味しいんだよ!?)



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