Extra Joyful

□着付けのお時間です
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ミサカネットワーク
約一万弱もの妹達は脳波をリンクさせ、様々な情報を共有しあう

そんな便利なミサカネットワークにあまり干渉されず影響されないのだが、珍しく情報を提供してもらい慣れない作業をチョチョイとやってみせたのは、


「番ちゃんが着せてくれたのさッ!みてみてー」

「夏の定番!お祭りの必須アイテム!ってミサカはミサカは番外個体が着せてくれた浴衣をお披露目してみる」


一方通行の前に立ち、黄泉川と芳川が帰って来るまで我慢出来ず番外個体に着せてもらった浴衣
トモは黒色で紫の花を散りばめるいつもと少し違う印象の大人っぽさを出した浴衣
打ち止めは赤色の大きなひまわが印象的な打ち止めらしい浴衣


「可愛い可愛い?可愛いでしょ〜!私達に惚れんなよー!」

「アナタのハートをバキューン!ってミサカはミサカはウィンクでポーズを決めてみる」

「………」


お披露目中なのだが披露されている本人、一方通行は最大級の顰めっ面で二人を見るだけで何も言わない

彼から可愛いとか惚れたとか、そんな言葉が返ってくるとは到底思っていないトモと打ち止めだが、無反応は予想していなかった
何か憎まれ口の一つや二つあると思っていたが、それも無い

ただ、眉間に皺を寄せまくって睨まれるようにソファーに座る彼に見られているだけ


「事件が起きたよミサカ!明日は夏なのに雪が降るぞー!?」

「本当に見惚れてるってミサカはミサカは毛布の用意をしなきゃって寒さ凌ぎ隊の再結成を提案してみたり」


ヒソヒソと身を縮こめあい一方通行に視線を向けながら喋る
だが、決して内緒話になっていない声なので一方通行の耳にも入る二人の会話

くだらない妄想をするトモと打ち止めに更に眉間の皺を深くさせ、舌打ちをかましソファーから重い腰をあげ二人の前に移動した


「どーよ?ミサカもやれば出来るってワケ。着てる人はさておきミサカが着せた浴衣ちゃん二着はまーかわ、」


いい。
と、続ける筈だった言葉はトモと打ち止めの‘いたい’と言う一言でかき消された

はあ?と今この場に合流した番外個体は状況の理解が全く出来ない
取り敢えず一方通行がお得意のチョップを二人にかましているので、これに対する‘いたい’発言だと言うことは分かった


「照れ隠しの理不尽な一発にミサカはミサカは頭をおさえてみたり」

「そこはチョップじゃなくて可愛い可愛いって頭を撫でるところでしょー!?」

「見苦しい寸胴姿のお礼にプレゼントをくれてやる。あァーカワイイカワイイ」


野菜でも切るように軽快にトントンと手を下に振り下ろす一方通行の最後のカワイイは、完璧な棒読みだ
今日は調子が良いらしくなかなかチョップの手が止まらない
合わせるように、イタッ!イタッ!と頭を揺らし唸るトモと打ち止め

後ろから見守り、言葉を遮られて少し不服な番外個体は、もぐら叩きかよ、と思ったり


「そう思ってるならチョップストップレーター!」

「なンか腹立つトモにゃァ5発追加をくれてやンよ」

「ちょっと久しぶりに名前呼んでくれて嬉しいとか思ったけど〜!痛いってばにーさん!?」


打ち止めへの手は止まったものの、何か勘に障った一方通行はトモだけに狙いを定める

一向に止まらない一方通行の手から抜け出すべく、トモは動いた


「全身全霊で阻止するのさッ!」

「暑苦しィ、邪魔だオバケヤロォが」


タックル抱き付きでべったりと一方通行の腰に手を回し攻撃から逃れた
と言っても身体は抑えられたが、両手は自由なので全くの意味のない行動だったりする


「それにトモさん今は透明人間じゃないからオバケじゃないもーん!失礼なヤツめ!」

「あン?オマエ等揃って幽霊じゃねェか、化けて出ンなよボケ共が」

「その‘等’にはしっかりとミサカも入っているのねってミサカはミサカはアナタのもとに化けて出るコトをココに宣言してみたり」

「ちょっとミサカを無視するなんて良い度胸ねって、アンタ達帯引っ張って脱がすぞ?あ〜れ〜ってね☆」

「「それはダメ!!」」


全力で否定する二人に、じゃあ話に混ぜろ〜と意外にも構ってちゃんなある意味可愛い一面を出した番外個体


「ちびっ子二人がオバケなのは知ってるけどさー?ミサカが着せてあげた浴衣はなかなか可愛いでしょ、白いオバケ」

「誰が白いオバケだコラ」


コレコレ、とトモと打ち止めの浴衣を人差し指をたてて指す番外個体

そして、先ほどから可愛いでしょ?と三人から言われている浴衣
オバケの正体はここにあった


「つゥかよォ、情けで忠告してやっとオマエ等そりゃァ逆だ」

「「「ぎゃくぅうう?」」」


トモの頭に手を置いて呆れた視線を向ける一方通行にトモは見上げて首を傾げる
打ち止めと番外個体も同様に首を傾げる

声を揃え、傾げる首も揃え、意味が分かっていない三人に、


「そりゃ死ンだヤツがする着方だ」

「ちょっともうちょっと分かるように説明お願いします」

「だからァ、右が上だと幽霊だっつってンだろオバケちゃンよォ?」


そう言われてトモと打ち止めは、数秒程固まった
そして何が逆なのか分かり、自分達の着る浴衣に視線を落とし、一方通行を見て最後に番外個体に視線を移し、


「番ちゃーーん!?」

「番外個体!?ってミサカはミサカはミサカ達をオバケにした犯人に絶句してみるー!!」

「…ミサカ知らなーい。悪いのはミサカに間違った情報をくれた10032号のせーだしぃ〜?」


叫ぶ二人に視線を右上にやり口笛でも吹きだしそうな番外個体はしれっとした

ここで最初に戻る。
一方通行がトモと打ち止めに顰めっ面で見惚れていた訳は、浴衣が逆に着せられていた事に気付いたからだ

そりゃ突然現れた二人がオバケ仕様の浴衣姿では、流石の一方通行でも驚いて視線を反らせない訳だ


「番外個体の事なのでてっきり死人に着せる物だと思ってました、とミサカは心中を吐露しておきます」


その場に居ない10032号、御坂妹は共有されたネットワークを介して事を知り、番外個体に対して失礼な一人言を呟いていたとか。


「ただいまじゃーん」

「遅くなってごめんなさいね。あら?浴衣着れたの?」

「「着直しだー!!」」


丁度その頃、出先から帰って来た黄泉川と芳川に駆け寄ったトモと打ち止め

綺麗に着こなす浴衣姿二人の登場に、何が着直しだー?と疑問に思ったが、二人の姿を再度見直してその意図が分かった

あぁ、オバケだな、と。


「丁度良かったじゃん?番外個体のも買って来たからみんなで着て祭りに行くじゃん」

「ミサカにもあるの?」

「もちろんじゃん、家族お揃いじゃんよ」

「…ふーん。ミサカがヤロー共を悩殺してやる」


黄泉川のさり気ない一言が番外個体は柄にもなく嬉しかった
そんな素直じゃない番外個体に黄泉川は察して微笑んだ


「もちろん一方通行の分もあるわよ」

「はァ?」

「たまにはいいでしょうに。お祭りは浴衣を着てこそね」

「番ちゃんもレータも浴衣〜!」

「ヨミカワもヨシカワも!ってミサカはミサカはお揃い仕様に幸せ指数がMAXになったのってお伝えしてみたり」


出掛けていたのは、全員分の浴衣を揃える為
人数分しっかりと用意をした所で楽しいお祭りが始まるのだ


「番ちゃん次はオバケじゃなくて、ちゃんと着ようねー!」

「しゃあーないからミサカがもっかい着付けてあげる」


早々に移動していた黄泉川の着替えるじゃん、と言う声が別の部屋から聞こえて来たのでトモと番外個体は部屋を後にした

今日は初めてのみんなで行く夏祭り。
ハシャぎ過ぎたトモと打ち止めが一回は一方通行によって怒られる日になる事だろう

そんな一人部屋に取り残された一方通行
流石に女性陣が5人着替える部屋には入れない
渡された浴衣を片手に思う

 …どォやって着ンだ?


着付けのお時間です
(まさか黄泉川に着付けてもらうなンざありえねェ。まして番外個体なンぞもっとありえねェ…オイ、どォしろってンだァ?)
(レータ!トモさんが着せてあげよーじゃないか!)
(…尚更ありえねェ)



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