Extra Joyful

□Eye Lotion!!
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思った事は何でも口にする
それこそ照れもせずにサラッとこっぱずかしいセリフを


「ダーリン!大好きー!」


今時‘ダーリン’だなんて…
と言う話だが、どうせどっかの漫画かドラマから拾って来たのだろう
首もとに纏わりついているが、特に気にしない


「………」

「ダーリンが無視します」

「………」

「ちょっと影薄ダーリン!?完全無視とか泣くぞー!?」

「………」


別にそんな位置に付いたつもりもないダーリンこと一方通行は、無視ムシむし…
トモなど一切眼中に入れずに特に面白いとも思っていない映画を気ダルそうに見ているだけ

キャーと悲鳴が飛び交い肉を裂かれ、身が飛び出し血を噴かせ…
なんとも悪趣味なモノをケロッと見る一方通行と映画を交互に見る

ちっとも相手にされていない。
全く持ってつまらない


「俺もオマエが好きに決まってンぜェ?ハニー」


結論から言うとコレはトモだ。
全く相手にされない時は、大体やるモノマネ=寂しい一人遊び
しっかり口調も真似る彼女に、今まで黙り無視していた一方通行は初めて動いた


「いたッ!?」

「誰が言うかよ、ンなクソ科白」


そう一言吐き捨て視線も向けずにチョップを食らわす
頭を押さえて忌々しそうに一方通行を見てトモは、ソファーに座りテレビから視線を外さない一方通行の膝の上に伸びた


「ヒーマーマーヒーヒーマーマーヒー」

「うぜェ」


ゴロゴロと膝の上で暴れるトモにもう一発チョップを
ぶーと頬を膨らませぶーたれるトモは無視ムシむし…

本日の彼女はどうも構ってチャン

いつもなら一人でべちゃくちゃ喋っているか、隣で一緒に映画に釘付けになってる頃か
取り敢えず無視をされようが、勝手に宜しくやってるのだが


「そろそろ遊んでくれないと本当に泣くぞー!?」

「勝手に泣いてろ」



撃沈し、一方通行の膝に埋めていた顔を少しあげ涙ぐみながら言うもあっさり切り捨てられる

涙の量が足りなかったか?
と、一向に画面から目を離さない一方通行を下から不服そうに見つめるトモは次なる行動へ移すためにもう一度彼の膝に埋まった


(なンだァ?急に静かになりやがった)


まさか本当に泣き出すんじゃないだろうな?と思う

トモの忙しい行動にはもう慣れた
今は居ないがトモと打ち止めが揃うと本当に騒がしい
二人で忙しなく辺りを駆けずり回る

そんな二人に涼しい顔をしつつも内心は冷や冷やする一方通行

まあ要するに何が言いたいのかと言うと、今日のトモは何だかいつもと違う


「…ヒッ、」

「あン?」


不意にアホ面を引っさげて笑うトモと打ち止めを思い出していると、膝に埋まるトモから奇妙な声が漏れた
下に視線をやり見ると、トモの肩が小刻みに震えていた


「オイ」


マジかよ…と思いつつ、上から声を掛けてみると伏せていた顔を少しだけあげた彼女にギクッとした

先程は潤んでいた瞳だったが、今は溜まった涙が頬に伝っていた
どうやら、拗ねでもして本当に泣き出した


「一方通行がトモを泣かしてるにゃー」

「つっちー!」


どうしようかと無言のにらみ合いを続けていると、丁度任務から土御門が帰って来た
沈黙を破った土御門にトモは顔をあげて状態を起こし土御門に泣きつきに行った


「そんなボロボロ泣いて、何されたんだにゃー?」

「あのね、」


目の前に来たトモは、涙を流すも何故か満面の笑みを見せる
少し疑問に思いつつ理由を聞けば、コソコソと話し出したので自然と耳を傾けてトモの小さな声を拾った

流し目で盗み見る一方通行は、段々とニヤツいていく土御門の顔に舌打ちをした
此処からではトモは背を向けていて見えないが、まだ泣いているのか?

どうでもいい話だが…
気になる。

ゴニョゴニョとトモにだけ聞こえるように耳打ちする土御門がなんとも憎たらしい

平静を装っていても耳はダンボな一方通行
何を一々気にしているんだ、と逆に自分に腹が立ってチッと小さく舌打ちをした


「なによ、なに泣いてんのよあなたは?」

「一方通行さんに泣かされたんですか?」


そしてこのタイミングで帰って来る結標と海原
中へと繋がる扉を開ければ、涙をボロボロと流しているが何故かニタァッと笑うトモ


「良い所に帰ってきたにゃー」


それに気付いた土御門も後ろを振り返りニタァッと不敵な笑みでお出迎え

顔を見合わせて首を傾げる結標と海原に手招きで呼び二人もトモの前に立った


(コソコソコソコソと…うざってェ)


いつもなら気にはしない事なのだが。
あからさまに玄関前で、例えるなら井戸端会議のよう…
まあ、女だけの会話でも無いしまして井戸なんて囲んでもないのだが…


(なンだ?この居心地の悪さわよォ)


スクラップされた男の悲鳴と血が噴き出している映像が流れているテレビ画面を見ながら眉を釣り上げる一方通行

顔面がピクピクとしてきた所で、


「構ってあげなさいよダーリン」

「ハニーを泣かすなんて紳士じゃないですねダーリン」

「俺が貰っちゃってもいいのかにゃ〜?ダァリィン?」


とてもおぞましい声が三連チャン
土御門辺り、言い方がなんとも憎たらしすぎる
そして、


「うわあああん!」


トモの泣き声で締める。

別に何かをした訳でもないのに揃いも揃って自分を悪者扱い
このまま喋らせておけば、確実に面倒な科白を飛ばし続けるだろう三人
そして更に面倒な一人は泣き声と共にとんでもない事を言いそうだ…


「……おっ!?」


次の馬鹿げた発言を言わさない為に一方通行は動いてみる


「いつまでもビースカ泣いてンじゃねェ。ガキかオマエは」


ソファーから立った一方通行は、トモの首根っこを掴み再びソファーへ着席
取り敢えず涙で顔がぐしゃぐしゃになったトモを膝の上に置き荒々しく涙を拭ってやる何とも手際の良い一方通行


「まるで私たちが空気のようね」

「一方通行さんも人の子ですから」

「アホ毛のおチビちゃんと天然ボケ子ちゃんにだけ発揮するデレだにゃー」


あの一方通行が泣いているトモに気をかけ、膝に乗せて涙を拭ってあげている一方通行らしかぬ行動を玄関前で見守る三人

やはり女の涙は強し
それが特別な人なら尚更効果は抜群だ


「ナニが悲しくて泣いてンだァ?」

「レータがハニーと呼んでくれないから泣いてるのよ」

「俺からンな台詞が出て来るとでも思ってンのか?想像しただけで寒気がするってなァ、自分によォ」


視線を明後日の方向にやって言う一方通行に、


「同感ね。風邪引くわ」

「大型の台風でもやってきそうです」

「竜巻も一緒にくるぜい」


空気のような三人は、空気のように横やりを入れる


「さーさぁー!今日はうさぎさんなトモさんをハニーと呼んでちょーだいよ」

「却下。」

「うさぎは寂しいと死んじゃうのですー!その前に大泣き…あ…」


一方通行の膝の上で暴れるトモのポケットからポロリと落ちた物があった
それに気付いたトモはギクリとしたように動きを止める
何が落ちたのか確認する為に視線を下へやった彼は見たのだ


「へェ?ビースカ泣く原因がコレってワケねェ」

「みんなー!バレたー!大変私の命の危険が迫ってます!!」

「オマエのテンションはいつもわっかンねェが、ンで今日は一段とさっぱりだがよ」

「ちょっとー!?玄関前の三人サン、ヘルプですよヘルプ!」

「本物の涙っつーのを流させてやンよ、ウサギのハニィ?」


床に落ちたモノ、それは目薬
トモの涙の正体だ。

ただ単に普通に暇だったので始まった、特に意味のないやり取り
何だか面白そうだったので乗ってみただけの結標に海原に土御門

ガッチリと膝の上で一方通行にホールドされるトモ
次に聞こえる悲鳴は、画面から流れたモノかトモのモノか…


Eye Lotion!!
(後は一人で頑張りなさい)
(仲が良いですね、お二人は)
(ハニーとダーリンは置いて任務に行くにゃ〜)
(ヒトデナシのロクデナシー!助けてーって首首!しまってますよくびくび!!)
(おーおー涙が足りてねェなァ?しっかり鳴けよォ)



ってことで兎季さんに捧げます^^
ただのギャグになってしまいましたが…
いつもありがとうございます!!



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