SHORT STORY

□お味噌汁から始まる愛
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「妊娠したの…」


妊娠ブーム。
周りは最近できちゃった婚が多い

その流行りにあたしも妄想で乗ってみた
勿論、妊娠なんてしてない
グレイを少しからかってみようと思い、深刻そうな表情を浮かべグレイに呟いてみる


「……マジ、で?」

「三カ月だって」


何とも言えないリアルな数字。
グレイは咥えていたタバコを口からポロリと落した

自分で言い出しといてアレだけど、今すぐ降ろせとか言われたら結構ショックだなと思っていると、


「…えっ、どうしたの!?」

「いーから座れ!」


一瞬放心していたグレイは、何を思ったのか急にソファーから立ち上がる
前に立っていたあたしの両肩を掴んでソファーに座らせられた

突然どうしたと言うのだろう?


「妊婦は安静にしてねえとダメだろ!?」

「え?」

「あっ、身体も冷やしちゃダメだな…!」


そう言ってグレイは寝室に駆け込み毛布を一枚取りに行き、手際良くあたしの身体に巻き付けた


「そうか妊娠か、そうか…いつかは出来ると思ってたけどよ?」

「あの、グレイ…?」

「俺が父ちゃんか〜こう言うのは胎児に話し掛けてやるといいんだよな」


そう言ってグレイはあたしのお腹に恐る恐る触れ、撫で始めた

パパでちゅよ〜とか言ってるんですけど…

グレイがここまで本気で反応してくれるとは思ってもみなかったので、嘘をついてしまったあたしは罪悪感でいっぱいだ。

 …どうしよう、取り替えしがつかない


「グレイ、」

「んぁ、すまねえ!まだだったな」

「何が?」

「俺の為に毎日、味噌汁作ってくれ!」

「…は?」


何言ってるのかしらこの人は…
毎日味噌汁って何ですか?


「何言ってるの?」

「プ、プロポーズだろ!分かれよお前〜」


プロポーズ?味噌汁作ってくれが?
いつの時代だ全く、ってプロポーズって…

グレイは恥ずかしかったのか、頭をポリポリかき耳を真っ赤にしていた

謝らなきゃ。
早く嘘だったって言わないと本当に取り替えしがつかなくなる


「グレイごめんね、本当は妊娠してないの」

「はあ!?」

「ちょっとからかってみただけなの。まさかグレイがそこまで真剣になってくれるとは思ってなくて」


グレイは、口をポカンと開けて唖然としていた

そりゃそうよね…
まさかここまで言って嘘だったなんて


「って、どこ行くの?」

「決まってんだろ?子作りだ」

「えぇ!?」

「俺がプロポーズまでしたんだ、このままで終わらせねーよ」


あたしが嘘をついてたのにグレイはそれを怒る事なく、かと思いきや子作りだなんて

このままじゃ終わらせない?
あたしとグレイは、結婚…?


「…あたしでいいの?」

「お前がいいんだよ!嘘ついてた罰だ、最後まで責任取れよ?」


あたしがついた嘘からまさか此処まで発展するとは思ってもみなかった。

プロポーズまでされちゃった

そう言えばグレイとこの間した人生ゲームのプロポーズの言葉候補にお味噌汁を作ってくれってあったけな
グレイはアレから取ったのか
なんともグレイらしいと言うか何と言うか…

格好良くキメない所が本当、グレイよね


「お味噌汁作ってあげるね」

「その前にたっぷり汁注いでやるよ」

「汁言うなー!?下ネタすぎ!」


グレイパパ…
実現するのは先の話ではないだろう。



お味噌汁から始まる愛
(覚悟しとけよ?)
(急にキャラ変り過ぎじゃない!?)
(明日は立てねえだろーから仕事は無理だな)
(…子作り中止ー!!!!)

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