SHORT STORY

□愛の証は大きな蚊
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「グレイ様!そのお顔…!?」


朝っぱらから飽きもせず、イチャコラやってるよ

グレイの顔だって?
それはあたしが引っ叩いたから赤いの

どうしてかって?
それはあたしがジュビアにヤキモチを妬いた痕よ


「んぁ?コレは蚊が顔に止ってよ」


蚊だって?
このクソ寒い季節に蚊なんか止まるかっての
止まったのは愛しのジュビアちゃんでしょ

あぁー腹が立つ
全てにおいてムカツク!


「顔が面白いことになってるけど?」

「ミラ」

「グレイの蚊の原因は、」

「そ、あたし」

「やっぱりね」

「ヤキモチと言う名の蚊がグレイの顔についてたの」


そうミラに言ってグレイを見やる
ジュビアが大丈夫ですか?と、心配そうにグレイに寄っていた

もうこの際、あたしと別れてジュビアと付き合えばいいのよ
夢にまで出て来るぐらいなんだからね?

カウンターの一角に座りながらグレイとジュビアとのやり取りを横目で見る


「手当てを…」

「いや、大丈夫だ」

「でも、」

「この蚊はさ、愛情たっぷりだからよ?」


愛情たっぷり?
何を言ってるんだか、憎しみはたっぷり詰まってるけどね!


「俺が構ってやらねえと拗ねるんだわ」


分かってるならジュビアの相手してないで、あたしに構いなさいよ


「好きなんだけどよ、どーも上手いこと伝わらねえ」


その好きは誰に向けて言ってるのかしらね?


「それって、もしかして…!」

「悪ィけどジュビアじゃねえ」


 …ん?

ちょっと、そんなストレートに言ったらいくら何でもジュビアが可哀相じゃないのよ

ってあたしもどっちの味方してんだか…


「百面相?面白いわね」

「だってミラ、グレイが酷いこと言ってる」

「フフフ、愛されてる証拠じゃない」


そりゃ面白い顔にもなる
グレイの一つ一つの言葉全てに反応して顔は段々と険しくなる


「ジュビアも好きだけどよ、仲間としてな」

「グレイ様…!」

「でも、もっと構ってやらねーといけねえヤツが居るんだわ」


それ期待してもいい?あたしの事だって…


「俺の告白聞いたか?」


暫く、グレイとジュビアとの会話が聞こえないなと思っていたら肩に暖かい温もりを感じた

本当、ムカツク!
すぐに誰だか分るに決まっている


「聞こえなかった」


可愛くない女。
素直に聞いてたって言えばいいのに、その一言が言えない


「そーかよ、じゃ俺の愛の告白聞くか?」

「聞いてあげてもいいわよ」


そして、グレイはあたしにだけ聞こえる様に耳元で囁いた

‘愛してる’と…


「聞こえだろ?」


そう言いニカッと私に笑いかけた。

何よ…
朝はあんなに怒ってたあたしもたった一言で怒りが冷めるだなんて…


「朝は悪かった、ごめんな」

「…もういいよ」

「でっけー蚊のおかげで目が覚めたからよ」

「愛情たっぷりだったでしょ?」

「あぁ、そりゃもー痛い程にな」


ジュビアはその頃、一人舞い上がっていた
グレイの最後の語尾は耳に届いておらず、グレイの‘好き’と言う言葉だけを頭の中でリピートさせていたからだ


「ジュビア、幸せ…」


彼女が幸せならそれで良しとしよう


「グレイ、」

「ん?」

「あたしも…す…き、よ」

「お、素直じゃねえか」


たまには素直になろう。
本当腹立つけど、あたしはグレイの事が大好きみたいだから

こんなあたしだけど…
ちゃんと構っておいてね?



愛の証は大きな蚊
(って訳でもう一発ビンタしていい?)
(何でそーなんたよ!?)
(グレイ様がジュビアを好きって…!!!!)
(ホラね、蚊が止まってるから)
(おい…冷静に…ちょッ、)

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