SHORT STORY

□食べ物の奇跡
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ボーッと見つめるその先に、大好きな彼が居る

あたしの大好きな彼は桜色の髪色で首にはイグニールから貰ったマフラーを肌身離さず巻いている

誰よりも仲間想い、誰よりも鈍感…
あたしが好きになった人はそんな人だ

目の前で美味しそうに彼限定のファイアーメニューを頬張るナツをあたしは両肘をついて眺める


「スナ、俺の顔になんかついてっか?」

「ん、何もついてないよ?」

「そーか?」


ずっとこうやってあたしなりのラブ光線を送っているんだけど、ナツが光線に等に気付く筈もなく…
自分の顔に何か付いているのかと勘違い

まぁ、全部をひっくるめてナツを好きなんだからいいんだけどね

うん、いいんだけどね…


「あ、やっぱり付いてる」

「お、ドコだ?」

「ココ。」


ナツの口元にはソースが付いていた
そのソースは何処から出て来たのかさっぱり分からないけど…

だって食べてる物は火だし

だけど目に付いたので、人差し指を立ててナツの口元のソースを拭ってあげた
あたしの動作をナツは目だけで追い掛ける
取ってあげたソースをナツの目の前でほらっ、と見せた
ナツはオォーっとソースに感嘆の声をあげる

そこであたしの遊び心が働いた
ナツがどう反応をしてくれるか、と


「ナツのモノはあたしのモノ!」

「スナ!?」


ナツにそう言ってソースの付いた人差し指をペロッと少し舌を出し、上目使い気味で舐めた

あたしはただ、ナツに少しでもドキッとしてほしかっただけだが…


「スナ今のエロいなー」


なんて一言が返って来た。
肩をガックシと落とし、机からズリ落ちそうになる
ナツはそんなあたしを関心した様な眼差しで目を見開いていた

ドキッとするとかしないとかの問題では無く、そういう風に捉えたのか…

超が付く程に鈍感なくせに、そう言う言葉だけはちゃっかり知ってるんだから


「スナも付いてんじゃねーか」

「…え?」


あたしも大概バカだ。
ナツ同様に口元にお昼に食べたスパゲティーのソースを付けていたみたいで、ナツがそれを人差し指で取ってペロッと舐めた

その一瞬過ぎた行動に唖然とナツを見ていると、


「スナのモンは俺のモンだろ?」


ニカッと無邪気に笑ってナツが言った

やられた…
ナツをドキッとさせるつもりが逆にあたしがドキッとさせられちゃった


「…そ、そうだね」

「あぁー腹減った!ミラ追加くれ〜」


ナツは気にする事もなく、手を挙げてミラに追加を頼む
そんなあたしは不意打ちでドキッとさせられたナツをまた両肘を付いて見つめる
ナツは気付いてないけど、今のはあたしのナツ好き度が更に上がった瞬間

今はこの小さな幸せだけであたしのお腹はいっぱいだ


そんなある日の小さな出来事。




TO BE CONTINUED
 

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