SHORT STORY

□乗り物の奇跡
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「…げふ、う…」

「大丈夫?ナツ」


仕事に向かう途中の出来事。

いつものことだけど、乗り物酔いに苦しむナツの姿が隣に居た
ナツの乗り物酔いはいつ見ても凄いもので…
これを見てるとあたしもハッピーみたいにエーラで飛んでナツを運んであげれたらといつも思う。


「ま、だか…?うぷ…着かね、か…おっ、」


腕を組み酷い顔をしたナツは必死で言葉を出している
その様子を呆れた表情で向かいの席から見るのは、今日一緒に仕事に行くルーシィとエルザ


「仕方がない。ナツ、私の隣に来い」

「い、いや、えん…ぉえっ…りょしま、す」


見兼ねたエルザがナツにそう言ったものの、ナツはそれを必死に声を出し遠慮する

ナツ…
エルザの申し出を断ってまで此処に座り続けると言うことは、もしかしてあたしの隣がいいってことなの…!?

変な期待をしてしまったスナはニヤけたいのを必死で抑えて顔を強張らせる


「エルザ、うぷ…また殴る…だから、いぃ…うっ、」

「そうか?」


そう言うことか…。
何があったか知らないけど前にこんな出来事があったのね
それでエルザに殴られたから此処から動きたくないだけか

たぶん気絶でもさせられたってとこかな

なーんだ
あたしの飛んだ勘違いで浮かれてたってことか…

さっきまでニヤつこうとしていた顔が今度は鈍よりとした顔になってしまったスナ


「はゃく…つけ、」


目的の街までは後二時間ぐらいはかかってしまう
二時間も隣に座るナツはこの状態なんだろうな

何も出来ず隣で嘔吐しそうなのを必死で止めているナツを横目に心配することしか出来ない自分が嫌だった


「わりぃ…うっ、げんかぃだ…おぇっ…」


その言葉を最後にナツはバタリと倒れた。
倒れた場所、それはあたしの丁度、膝の上…


「スナ、ちょっと…貸して、く…れ…」


ナツはそう言って意識を飛ばした


「ナツったらさりげなく美味しいポジションね」

「スナ、ナツを頼んだ」


バタリと倒れたナツを見てルーシィーとエルザが半場呆れ気味にそれぞれ口にした

美味しいポジション?
いやいや…
美味しいのはむしろあたしの方で

ナツを頼む?
そんなの喜んで引き受けさせて頂きますけどー!

ナツの乗り物酔いを喜んじゃいけないのに、この状況喜ばずにはいられない
まさかこんな展開が待ってるなんて思ってなくて、さっきナツによって落とされたニヤニヤは紛れも無くナツによって復活


「ナツったら、仕方がないね」


エルザとルーシィに向かってあたしはそう言った
そう言わなくちゃあたしは平常心を保てない気がしたから
顔は呆れた顔をして言ったけど、内心すごくニヤ付きたいのを抑える

平常に平常に…
あたしは行き場の無くした手をさりげなくナツのお腹辺りに置いた

ナツは眠っていても気持ちが悪いのか時折、うーと唸る
あたしのひざ枕で気分が良くなればいいな
スナは心の中でそう思い穏やかな笑みをナツに向けた


生憎今日はジーパン姿のスナは内心スカートを履いていればと思ったとか…




TO BE CONTINUED
 

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