SHORT STORY

□湯けむりの奇跡
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「気持ち〜」


大きな露天風呂を貸し切り状態
肩まで湯の中にゆっくりと沈んで行き今日一日の疲れを癒す


仕事を終えて時間も時間なので一泊して帰ることになった
そんなあたしは、宿に着いてから疲れがドッと出たのか、すぐに寝てしまっていた

起きるとエルザとルーシィは先にお風呂を済ませていたので夜ご飯を食べ、みんなが寝静まったのを見計らい誰も居ない時間であろう夜中の十二時を回ってからお風呂に入りに来た

案の定誰も居なくて、一番広い真ん中に位置する露天風呂を占領する事に成功


「泳いじゃうよ〜」


誰も居ないのを良いコトに露天風呂で泳ぎだす
誰も居ないと分かれば一度はやりたくなるお風呂での水泳


「スナ居たのか!」

「…ん?」


ピタリと動きを止めて気持ち良く泳いでいた身体が止まる

あたしの名を呼ぶ聞き覚えのある声の主に目を凝らして見遣る

湯気の所為でぼやけた視界に段々と目が慣れだし、少しずつ見えてくる相手に向かって、


「な、な…ナツーーー!?」

「ん?どうした、そんな大声出して」


盛大に叫んだ。

腰にタオルを巻き仁王立ちのナツに向かって叫ぶ
ナツはあたしが叫んだ意味を分かっていないのか、首を傾げてゆっくりとこちらに歩いて来た

そしてあたしが今、一人で貸し切っていた露天風呂に静かに入ってきた…

この一連の不可解なナツの行動に開いた口が閉じずア然。
近付いて来るナツを目で追い掛ける

どうしてそんなに平然と女湯に入って来て、あたしを目の前にしているにも拘わらず普通で居られるのか…

生憎、乳白色のこの露天風呂は湯舟に浸かってしまえば身体は見えない
ナツが入って来たと同時に声も出せずに深く湯の中に身を沈める


「まさかスナが居るとは思ってなかったわ、泳ごうと思ってたのによ」


ナツはブーッと頬を膨らましふて腐れていた

いやいや、ナツさん…
問題はそこじゃないでしょ?

確かにナツのコトは大好きだけど、いきなり何も始まってないのに二人っきりでお風呂は、かなり難易度高すぎやしません?


「ナツ、あの…」

「んあ?」

「…ここ女湯ですけど、」


逆に自分がすごいと思う。
だって普通はキャー!?って発狂するところでしょ?

それを叫びもせずに男の人と何もなかったように湯舟に浸かって居られるあたしの神経はすごいのかもしれない

 …いや違う。

今の状況に着いて行けず、言葉をどう発したらいいのか分からないだけ…


「何言ってんだスナ?ココ混浴だろ」


バカだなスナ、と…
そんなことを言い高らかに笑うのはナツ。

何だって?混浴だって…!?
あたしは今、混浴風呂に平然と浸かって居たってワケ!?

男湯と女湯の丁度ど真ん中に位置するこの露天風呂
普通は男と女の入浴する時間帯が分かれているのだが、夜中十二時を回ってしまうと客も少ないと言う理由で混浴になってしまうこの露天風呂

スナは知らずに人が居ないはずと狙ってこの時間帯を選び入った訳だが…

それと対照的にナツは知っていたが、夜中だし人は居ないと思ってやって来た

話が噛み合っていないようで噛み合っている二人だった


「まあたまにはスナと風呂っつーのもいいか」

「あ……いいの!?だって仮にも男のナツが女のあたしと一緒にお風呂なんて………そんな恥ずかし……でもちょっと嬉しい……」


ナツのさりげない一言に食いついたスナは必死になって話す
だが、段々と語尾が小さくなって行く

嬉しいと言ったスナの声はナツに届いたのかは分からない

顔を真っ赤にして言うスナを見て、ナツは頭に疑問符を沢山つけた


「スナ、混浴っつーのは男と女が一緒に入るから混浴ってんだよ!そんなんも分かんねえのか?引くわー」

「えっ…そうね、ごめんなさい…」


あっ…あのぉ?
あたしナツに物凄く引かれてますけどー

なんでか謝ってるんですけどー

ナツからしてみれば、ハッピーは乗り物ではなく仲間だと言うこと
つまりは、このお風呂は混浴だからスナと一緒に風呂に入るのは当然だと言うこと

ある意味頭の回転が柔らかい。

一人で恥ずかしがるあたしは、ナツから見ればバカな女?

もーいいわ!
そうよ、ナツと一緒に風呂だなんてこの先あるかどうかも分からないんだから!
この際、好きな人とお風呂に入れているんだから!

このチャンスはモノにしなくちゃ!!


「ナツとお風呂嬉しいなッ!」

「そうか!よし勝負だスナ!」


急に一変したスナの態度に不思議に思うも、相手がノって来たのなら話は早い
勝負と言う名のお湯の掛け合いを仕掛ける
スナも顔から下を隠す様に頑張ってナツにお湯をかける

そんなムードもへったくれも無い二人。

ナツらしいと言えばナツらしいので、こんな混浴も有りかとスナは思った



TO BE CONTINUED
 

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