SHORT STORY
□４月１日
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「やだ、ロキ嫌い」
「相変わらず冷たいな〜」
妖精の尻尾一のモテ男。
週間ソーサラーにはいつも上位に入るこの男
軽いし口上手だし…
行動も何もかも全てに置いて信じられない。
だけど言葉とは裏腹に最近目で追ってしまう自分がいる
そりゃどんだけ嫌いでも、こう毎日の用にあたしを見る度にパアッと花が咲いたかの様に笑って肩を寄せて来るロキが来れば何かしら心が動くに決まっている。
とびっきりのブサイクだったら話は別だったとして…
相手はとびっきりのイケメンときた。
「でも俺は好きだよ？」
「それみんなに言ってるんでしょ」
今日も何度目かになるロキのアプローチに内心ドキドキしながらも、軽くあしらう。
だって本当にそうだもの
毎日の様に違う女の子を両脇に抱えているロキに好きだと一言言われたぐらいではあたしの心は動かない
でも今日のロキはしつこいらしく、いつもならあたしが一言言えば小さな文句を言って去って行くロキも引き下がらない
「あたしはロキが嫌いなの」
「ふーん…本当に？」
「何が言いたい訳？」
いつもと違うロキにまるであたしの心を見透かされているような気がした。
そんないつもと違う一言に動揺しそうになりながらも、平然を装う
「顔に書いてあるよ、俺が好きだって」
「なっ…」
なんてことを言うのかしら…
この自信は一体どこからやって来るって言うの！？
例えあたしがロキを好きでいたとしても、本人にはそれらしい態度はとったこともないのに
「知ってるよ、いつも俺のこと見てくれてること」
「…見てない」
「それに女の子連れてるとヤキモチ妬いてくれてるのも」
「妬いてない…」
本当、何なのこの男！？
何であたしの無意識の行動がバレてるのよ…
自分でも最近自覚したぐらいだってのに
こんなのに惑わされないんだから！
ロキの一つ一つの発言に胸に一本づつ矢が突き刺さって行く
それは確かに言葉とは裏腹に実際そう思っているからだ
「今日は何の日か知ってる？」
「何よ急に」
今までの話は何だったの？と聞きたいぐらいに、ガラリと話を変えたロキ。
今日は何の日かって…
４月１日でしょ？
誰かの誕生日かと思ったけど心当たりはないし、特に変わった行事はないと思うんだけど
「エイプリルフール！」
「は？」
「エイプリルフールは嘘をついてもいい日だろ？だから嘘ついたって無駄な日だ」
素っ頓狂な声を出したあたしに説明するロキは得意げな笑みを浮かべてそう言った
エイプリルフールとかそう言えばそんな日もあったなと思った
思ったけど…
だから何だって言うのよ！？
「だからダメだよ、嘘ついちゃ！俺のこと好きなくせに」
「な、ばっ…キライだって言ってんでしょ！」
どんだけプラス思考な男なの
つまり今日は４月１日でエイプリルフールだから、あたしがキライだって言うことも嘘だと言いたい訳！？
その前にあたしは毎日の様に嫌いだって言ってるにも拘わらず、それは無視な訳ね…
「キライだからね！」
「うんうん、好きなんだね」
「キライ！キライ！」
「じゃ俺も嫌いだ」
「…え？」
そりゃ嫌いだと言ったのはあたしだけど…
急に好きだ好きだと言っていた人に嫌いだと言われれば、悲しくなってくる
たぶんあたしの顔、今凄く悲しそうな顔をしているに違いない
だってあたしを嫌いだと言ったロキの今までに見たこともないくらいの顔
本当にあたしを拒絶した顔だったのだから
「あの…違う、本当は…」
「なーんちゃって！今日はエイプリルフールって言っただろ？嫌いなんて嘘さ」
あたしは今、ロキに何を言おうとした…？
ロキの顔を見て悲しくなったあたしは、本当は好きだと言おうとした？
この目の前でさっきまでの表情は何処に行ったんだと聞きたいぐらいの、今度はとびきりの笑顔。
あたしはこの一瞬をどんだけこの男に遊ばれただろうか…
「やっぱ俺のこと好きだろ？今言おうとしたよね」
「してない！嫌い！」
「今日はエイプリルフールだからね、言えば言うほど無駄」
「もー！！」
あたしは既にロキのペースにどっぷりハマッている
もうあたしが何を言おうがロキには敵わないみたい
どんだけ嫌いだと思っていても内心は好きらしいから…
これが惚れた弱みって言うのかな。
「俺も大嫌いだ、嫌いだからキスしていい？」
「やだ、嫌いな人にされても嬉しくない」
‘俺も大好きだ、好きだからキスしていい？’
‘いいよ、好きな人にされたら嬉しい’
エイプリルフール。
実は一番、素直になれる日なのかもしれない…
ロキなんて大っキライ！
END