SHORT STORY
□無意識の奇跡
1ページ/1ページ
「グレイが羨ましい…」
ボソリと呟いた。
カウンターに腰を下ろし、机に突っ伏すあたしの隣に座ったグレイ
あたしが呼んだから隣に来たと言ってもいいぐらいのタイミングでやってきた
そんなグレイを恨めしく思い、隣に座るグレイを下から少し睨みつける様に見た
「何そんな怖い顔してんだよ?」
「グレイに羨ましいと言う眼差しを向けてんだよ」
その痛い程、感じた視線に何だと思い隣に視線を向ければ眉間に皺を寄せまくったスナと目が合う
「グレイばっかりナツとラブラブずるい!」
「どこをどうツッコミ入れていいのかわからねえ…」
コイツは何を言ってるんだ?と、言う表情でグレイはスナを見た
ナツとラブラブって普段の俺らを見てどう漕ぎ着けたらそうなるのか…
「ナツは鈍感だし、ルーシィと言う強敵は居るし、更にグレイまでも…あたしは何処の隙に入ればいいんだよー」
「ハァ〜ン?スナナツが好きなのか」
「んなっ…!そーだよ大好きなんだよ!」
「照れて逆ギレかよ」
まさかそんな反応が返って来るとは思ってなく、口調とは裏腹に顔は真っ赤だ
ルーシィになら分かるが、一緒に敵意を向き出しにされても若干困る
しかもナツ絡みで…
思いっきり同性じゃねえか
まあ、それが好きってことなんだろうなとか思いつつ、ぶーぶーと文句を垂れるスナをあやしつつ騒ぐ
そんなギャアギャアと騒ぐ二人に歩み寄るもの一人。
「スナ危ねえぞ!」
「へっ?」
急に呼ばれたかと思いきや、肩に回った腕
素っ頓狂な声と共に横に目を向ければ、フワッと鼻に掛かった桜色の髪の毛
「スナ、変態うつんぞ!」
「聞き捨てならねぇな、オイ」
突如現れたナツと先ほどまでやっていた喧嘩が再開される
二人でギャアギャアと口喧嘩が始まる中、あたしはと言うと…
ナツに肩を抱かれているものでグレイとナツが睨み合いを始めれば一緒に前のめりに
左右に動き怒りを表せば、一緒に左右へ揺れる
されるがままの状態になっている訳だ
そんな彼女を忘れてナツとの喧嘩に夢中になっていたグレイは、ふと思い出した様に視線をスナに向ける
「幸せそうな顔してんじゃねえ」
「い゛だっ!?」
顔が綻んでいるようにも見えるスナにデコピンをお見舞いしてやった
突如降ってきたデコピンに我に返り、濁った声を出す
何故か肩を組まれ抱かれたままのスナにとっては美味しいポジションで、自然と顔が緩んでいたらしい
現実に引き戻された瞬間だった
「スナ!ココに居たら危ねえぞ!逃げとけ」
「うん、そうなんだけどね…動けないんだよ」
「なんで?」
グレイに攻撃されたデコを抑え、うっすらと涙を浮かべていたらナツが急に言い出した
なんで?
とか言っちゃってるんですけどー
そりや、ナツさんに身体を固定されてるから身動きとれずに二人のラブっぷりを見ることしか出来ないからなんだけど
なんで?って言ってる時点でこの肩に回る腕は無意識なのだろう
「スナ先は長いな」
「承知しております…」
「何の話だよ?」
哀れんだ顔で言うグレイに返す言葉は一つ
無意識鈍感男、ナツを振り向かせるのは相当な忍耐がいる事は分かっています
ナツは話の内容に着いていけないので、頭には疑問符がいっぱいだ
「だぁー訳分かんね!スナ行くぞ」
「どどこに!?」
「飯食いにだ!グレイのせいで腹減って来た」
「何で俺のせーだよ…」
無理矢理な言い回しをしてスナをグイッと引っ張って歩き出したナツ
反動で転けそうになるのを堪え体制をなんとか戻しついて行く
ナツに肩を抱かれたまま去って行った二人の後ろ姿にグレイは息をフーっと吐いた
「無意識鈍感はお互い様ってか」
誰にも聞こえない声で静かにぼやいた言葉は、煙草の煙と一緒に消えた
ナツの隣を歩くスナの顔は耳まで真っ赤
だが、ナツの隣に居るときがスナが一番可愛い
「ナツ何食べに行くの?」
「わかんね、スナでも食うか!」
「ハ、ハレンチ…なっ!!」
お互いの気持ちに気付くのはまだまだ先のお話。
TO BE CONTINUED