SHORT STORY

□その時二人は…!?
1ページ/1ページ


「誰だ!コイツと組ませた奴は!?」

「そんなモン俺が聞きてーよ」

「無理だろ…出だしから服来てねー奴なんかと拍手お礼考えろとか」

「アァ!?文句あんのか」


Clap部屋にて…
厳選なクジ引きに寄り決められた二人一組での拍手お礼をせよとの命令が下された

ただ今の時刻、早朝4:30分。


「誰が下したんだっつーの!」

「ナツ、ンなことも知らねえのかよ」

「知るか!俺はさっきまで寝てたんだぞ」

「まあ、俺も起こされてここに居んだけどよ」

「つか、Clap部屋って何だ!?」

「クジ引きって引いた覚えねーけど?引いたかナツ?」

「引いてねーよ!!で、誰だ?意味不明な命令を下したって奴は」

「知るか」

「あたかも知ってる素振りしてたのは何処のどいつだ、あン?」

「テメェが知ってねーで、どうやって俺が知るんだ、おォ?」


そして始まる無意味な取っ組み合い。
両者共に顔に傷を作って数分後…


「ハァ、ハァ…いつまでやるんだよ」

「ハァ…俺の方がハァの数少なかったから俺の勝ちってことで終わりにしてやる」

「ふざけんなッ!裸変態マフラーヤローに負けてたまるか」

「俺はマフラー!グレイは何もなし、ただの変態。やっぱ俺の勝ちだな」

「つか、テメェまで何で脱いでんだよ!それは俺の役目だ!つーことで真似は反則と見なし俺の勝ちだ」

「ガキみたいなこと言って、引くわー」

「テメェがふっかけて来たんだろ!」

「何だこのメモ?」

「無視かよ…」

「えーっと、‘喧嘩の多い二人は、これを機会に愛をテーマに演出してみて下さい’…はあ!?」

「ふざけたこと言ってんじゃねえ!文字読めねーのか!?…うわ、マジで書いてんじゃねえか」


‘尚、実行されない場合はこの部屋から出られません。二人の愛を見せ付けて、日頃のお礼をお客様にして下さい’

テーブルの上に置かれたメモを肩を並べて読んだ二人
その内容に目を見開き口をポカンとあけた

そして再び始まる二人の愛と言う名の喧嘩…


「何が嬉しくて、この変態と愛を見せ付けるってんだ!」

「俺は男の趣味はねえぞ!無理難題だろ」

「一生部屋から出られねえぞ…」

「地球がひっくり返ってもありえねえ…」

「大体グレイが必要以上に絡んでくんのが悪いんだろ!」

「はあ?その言葉そっくりそのまま返してやるよ」

「俺がいつ、絡んだってんだよ、アァン?」

「バカの一つ覚えみてぇに絡みにくんだろ、ハァン?」


巻き舌で眉間に皺を寄せまくって、取っ組み合い再開のゴングが再び鳴った。
そして数分後…


「ハァ、ハァ…いい加減飽きたぞ、このやり取り」

「…俺はハァ何て言わねーぞ!根本的にグレイの負けだ」

「またそれかよ」

「よし!コレが愛だ!」

「どこが愛だ!?」

「早く出せ!任務完了だ」

「何の任務だよ…」


そしてシーンと部屋が静まり返った。
ただの喧嘩なので、もちろんナツが何と言おうが愛でも何でもないので扉は開かない

呆然と立ち尽くした二人


「ナツ、このままだと本当に部屋から出られねえ。そこでだ!」

「何かあんのか?」

「メモを実行すんぞ」

「…愛を?」

「そうだ」

「無理だ…グレイとあんなことや…こんなこと…あー鳥肌ヤベェ!!」

「何の妄想だよ……いいか?エルザが居ると思えばいいんだ」

「うわっ、とんでもねーこと言うな」

「エルザが居る、じゃあ俺達がすることは?」

「嫌だけどアレか」

「まず肩を組む!」

「仲良くナカヨク…」

「んで笑え!」

「あい…」

「よし!これが愛だ!」

「あい!」

「つまんねぇこと言ってんじゃねえよ!それで何だ?お礼か」

「サンキュー」

「軽いな…まあ、いつもありがとよ」


ぎこちない肩組で開き直ったナツとグレイはそれぞれ感謝の気持ちを述べる

これで完璧。
扉は開くだろうと思ったが…


「何で開かねーんだよ!?」

「これ以上やることねえぞ!」


それでも扉は反応しない。
開く所か部屋は再びシーンと静まり返る


「ナツが適当すぎんだよ」

「グレイこそ、まあってなんだよ」

「サンキューよりありがとうの方が心籠もってんだろ」

「文句つけんのか、露出魔!」

「テメェこそ、グダグダとマフラー露出魔!」

「やんのかコラ!?」

「受けて立ってや…って、」

「うぉおッい…!」


取っ組み合いの再ゴング鳴る寸前の出来事。

奇跡は起こった


「ん゛ーーッ!?」

「……ごめ」


空いた手で掴み掛かろうとしたグレイは、足をもつれさす
そのままナツ目掛けて急降下
降ってくるグレイにどうすることも出来ず固まったナツ

仲良く地面に倒れた

それを拍手の神様は見逃さない
地面とグレイに挟まれたナツは唇をグレイに奪われた


「なななななーー!?」

「いや…説明の仕様が…いや、スマン」


端から見ればグレイに押し倒されキスをされた状態のナツ

数秒程、我に返ったナツはあたふた
ガバッと姿勢を起こし小さく謝ったグレイ

愛は突然に起こった

その瞬間に今までビクともしなかった扉はガチャリと音を立てて空いた


「開いたな…」

「あぁ、開いたな…」


まさかの愛の形に二人は呆然とした


「寄んな!こっち来んなッ」

「ナツ…意外と柔らかいんだな」

「…!?うっせッ!黙れ、クソヤロー!変態脱ぎ魔」

「いや、こうでも言っとかねえとやりきれね…」


ナツは扉目掛けて走り出す
グレイはハハハと乾いた笑みを後ろから送る

奇跡を起こした二人は部屋を静かに後にした




END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ