SHORT STORY

□サンタバカ
1ページ/1ページ


今日はクリスマスイヴ。

バカナツとは今日、一回も会っていない
と言うか朝からギルドに一日中居なかった。

少しぐらい…
いや、大分気になる訳で…

ナツが気付くまで口を聞かないと変な意地を張ってしまった為、引くに引けない
だからと言ってクリスマスに彼氏が居るのにも拘わらず一緒に過ごせないのも淋しい

ナツはバカだから行事ごと等に疎いのは知っている。
あたしがあの時怒らないで教えてあげればよかったと今更、後悔する

あと、二分後には12月25日
もうすぐクリスマスなのに…

あたしはと言うと、ベッドに潜り込み一人淋しくクリスマスを迎える淋し過ぎる女。

物思いに更けているとカチッと言う物音が部屋中に響いた
それは丁度、十二時を指した音
呆気なくクリスマスを迎えてしまった

少しでもナツが来てくれるかなとか期待したけど…
シーンと静まり返る部屋に虚しくり、溜め息を一つ零し布団を頭までスッポリ被った

もう寝る!
寝て忘れる、この寂しさも虚しさも…


 …ガタッ


「…ん?」


 …ガタ、ガ…ドスンッ!


「え…!?」


誰も居る筈のない部屋に響く物凄い音
ガタッと一瞬鳴った音は、ドスンと大きな音を立てた


 …サンタが落ちた?


いやいや、この部屋に煙突とかないし、おとぎ話みたいに落ちるなんて…

て言うか誰!?
こんな夜中に、不法侵入!?

まさか泥棒…

冷静に考えると普通に怖い訳で
布団に深く潜り込んで身を縮こませる。
そうするとこの静かな部屋に響く
ペタペタとゆっくりこちらに向かって来る足音が…

あたしも魔導士なのよ
こんな事でビビってる場合じゃない

そして止まった足音…

今がチャンス!
正体不明の何かをやっつけるのよ

布団から勢い良くバッ!と飛び出て立ち向かう
そのままベッドの前付近に居るであろう何かに近寄り殴り込みに行こうとしたら…

あたしの渾身のグーパンチがピタッと止まった


「…は?ナツ!?」

「お、おぉ見つかってしまった…俺はサンタだ!」


真っ赤な服に身を纏ったナツ…基、自称サンタ

何やってんのよ、アンタ…

まさかナツだったなんて考えもしなかった
ナツサンタは腰に手を当て高らかに笑っていた


「で、サンタさんは何しに来たのかしら?」

「今日はクリスマスだ!サンタはプレゼントを持って来た!」


すっかりサンタに成り切っているナツに合わせて問い掛ける
ナツの登場に驚いたもののナツの格好に拍子抜け。
ずっと話していなかったのに久しぶりに会話したのがコレ


「バレてしまっては仕方ない!スナにはサンタからプレゼントをあげよう!」

「プレゼント?」


ナツ…
クリスマス気付いてくれたんだね
だから今、ここに居てくれてるの?

一瞬の内に色んな事が起こりツッコミ所満載なんだけど、さっきまでの淋しい気持ちが目の前に居るナツにより埋められていく


「スナにはコレだ!」

「何これ?」


ナツサンタがあたしの手の平に小さな箱を乗せた
箱をマジマジと見つめてゆっくりと開ける


「コレ…」

「サンタはスナのコトは何でもお見通しなんだぞ」


そう言ってニッと笑うナツ

箱の中に入っていた物。
それは、あたしがずっと欲しがっていたブランドの指輪だ
高くて買えないとルーシィにこの間言っていた所だった

ナツに言った事無いのにどうして?


「サンタは耳もいいんだぞ?」

「聞いてた、の?」

「聞こえてたの」


そう言ってまた笑うナツ。

数日前まではケンカバカの所為で怒っていた
でも今、目の前に居るナツはクリスマスってこと分かってくれて、そのうえサンタに化けてプレゼントまで用意してくれて…

「ありがとう!」

「うおッ…!?」


嬉しさが込み上げナツに勢い良く抱き付いた
いきなり抱き着きに行ったのでナツは素っ頓狂な声を出し、受け止める


「高いのにコレ」

「だから今日仕事しに行ってたんだ」

「ナツ、」

「なんとかクリスマスに間に合ったぞ!」


バカナツ…
バカだけど一生懸命になってくれて…
プレゼント買う為に仕事に出てたから今日一日居なかったんだね

やっぱあたし、ナツが大好きだな


「ごめんね、怒っちゃって」

「俺こそごめんな、スナメリークリスマス!」

「うん!メリークリスマス!」


お互い見つめ合って笑った。
それから、ナツがぎこちなくあたしを抱きしめ返してくれた

後に聞いた話、ドスンって音は窓から入って来た時に足を滑らせ落ちたらしい

全くナツらしいね

ナツ、プレゼントありがとう
一生の宝物にするね


「ナツだーい好き!」




EPISODE COMPLETE

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ