SHORT STORY

□俺のネコは身近に。
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「…オカシイ」


何でだ!?なんでなんだ!?

アッチもコッチも…
アイツもアイツもアイツも…!


「なんで俺だけ居ねえッ!?」


そうだなんでなんだ…!?
サラマンダーはバニーガール
パン一野郎にはジュビア
カウボーイにカウガール
あのネコでさえメスネコ

他にもその辺にゴロゴロと…
辺りを見渡しゃ出遅れた俺はいつの間にか一人…


「ど…どこだ…俺の…俺の…」


ヤツレた顔でフラフラと路地裏を放浪するガジルは、ゴミ箱の蓋を開ける
そんな所を開けたって探し物は見つかる訳がない

ギルドで大人しくしていても、あちらこちらからハートでも飛び出てきそうなギルドに居たたまれなくなり、外へ繰り出してみたはいいが、


「ドコにも居やしねェエエ!!!!」


身も心もボロボロなガジルは、道端に倒れ、天に手を掲げまぶしい太陽の光に目を細めた


「はあ?ちょっと何やってんの?」


そんな時、天から女神が舞い降りた


「少し見ない間に老け込んだ?服がボロボロなのが一番意味分かんないんだけどさ」


たまたま通りかかったスナが道端で倒れ込むガジルを発見する
一ヶ月程、長期の仕事に行っていたスナは今日久々に帰って来た


「いつもの皮肉はどした?一体この一ヶ月の間に何があったか知んないけど、帰って来て早々ボロんちょガジルに出会うとは思わなかなったわ」


ガジルの側まで近寄って行き真ん前で膝を揃えてしゃがんだスナは首を傾げながら言った

突如現れたスナを顔を上げ下から見上げたガジルからは、太陽に照らされたスナがとても光り輝いて見えた


「顔もドロドロじゃない、一体何があったのよ?」


ズボンのポケットに入れてあったハンカチでガジルの顔に付いていた泥を拭ってあげる

仕事から帰って早々に子供みたいなガジルに会い、泥を拭ってあげている今この状況に笑えてきたりする


「ん?ホント大丈夫?ぼーっとしちゃってさ、そんな見つめられても困るんですけどー」


気になる程に真正面からガジルに見つめられ、マグノリアに帰って来てからスナは‘?’だらけだ

取り敢えず、面白いぐらいにいつもと様子が違うガジルの顔をのぞき込んでみると、


「俺のオンナァアアア!!」


瞳をキラキラとさせ突如勢い任せにガジルが飛び付いて来た


「ちょっ…はあ!?何トンチンカンなコト言ってって離れなさいよー!」


いきなりギュウギュウと抱き付いてくるガジルに疑問符は最高潮に達するスナは、纏わりつくガジルを必死で引き剥がす


「スナ喜べ!お前を今日から俺の彼女にしてやる、ギヒッ」

「ギヒッ…じゃないわよ!何で上からで決定事項になってるワケよ!?」

「一ヶ月も居なかったからな、お前と言う存在を忘れていた。つーワケだ、俺のモノになれ」

「どー言うワケよ!?」


スナからすればさっぱりな俺様ガジル
少し見ない間にキャラまで変わってしまったのか?


「どーでもいいから取り敢えず邪魔。何しに地面に押し倒されてんのよ私は」

「黙れ、無理、嫌だ」

「ガジルくーん?それをキャラ崩壊って言うのよ」

「カップルは抱き合うもんだ」

「抱き合ってない、一方的だから。しかもカップルじゃないし」

「いーや、俺は決めた!お前は今日から俺の女!俺の彼女!俺のネコォオオ!」

「あーもうウルサいアンタ!」


最早、ガジルと言うキャラが崩壊所じゃ済まない程になっている訳で…

今更ながらの経緯。
別に至って今までと変わりのない妖精の尻尾
いつものようにドンチャン騒ぎで笑顔の溢れるギルドだ

沢山の人が居る中で、カップルも居たり片思い中の人が居たり男女仲良く話していたり、と何かしらのペアが存在していたりする

その時ガジルは気付いた
自分にはそんな人が一人も居ない事に
気が付けば可哀想な一人モンじゃないか、と。


「分かったから!どけッ!」

「そうか、分かったか。じゃあ退いてやる」


何も分かっていないのだが、邪魔なガジルを剥がす
何故か盛っているガジルは放っておき、立ち上がったスナはひとまずギルドへと足を向ける


「で?何があったか説明しなさいよ」

「別に何もねぇ。相変わらず桃色ギルドだ」

「ガジルから桃色なんて言葉聞くと可愛いわね…」


人付き合いをあまりしない一匹狼的なガジルだが、スナとは割と良く絡む

そんな訳で、漸くギルドへと一ヶ月ぶりに帰って来た訳だが、


「いつもと一緒じゃないのー!!」

「お前の目は節穴か?ピンクピンクしてんじゃねえか」


帰って来て最初に目に飛び込んで来たのは、ナツがテーブルをひっくり返す場面
グレイは相変わらずの真っ裸
ルーシィがぎゃあー!と、飛んでくるテーブルに悲鳴をあげる
グレイの素敵な姿に目をハートマークにするジュビア
ジェットとドロイが相変わらずレビィの周りで奮闘中
アルザックとビスカも相変わらず仲が宜しいようで

一ヶ月ぶりのギルドは、1ヶ月前と何も変わっていない


「おかえりなさいスナ!あら、ガジルも一緒だったの」

「ただいまミラ!なんか道端で激しいアタックを受けた」


久々に見るスナに笑顔で出迎えるミラに疲れた顔をして答える
今日と言う1日を一気に疲れさせた張本人は、


「コラァ!オス共ォ!俺のスナとお前らのメス共で勝負させろやァ」


騒ぎ倒す輪の中心にいつの間にか混ざっていた


「おっしゃァ!いけ、ルーシィ!」

「はぁー!?」


ルーシィに指を指しながら言ったガジルに意味が分かっていないもノったナツがルーシィを押しながらスナの方に向かわす


「ちょっと黙ってなさいよ、アンタァッ!」


未だにスットコドッコイな事を言うガジルにゲンコツを一発食らわす


「全く、いつから私がガジルのモノになってんのよ!?」

「スナ!?おかえり!」


ナツに押されて来たルーシィがスナの存在に気付く
それからみんなもスナに気付き、‘おかえり’と言う言葉が沢山向けられた

みんなに答えて笑顔で‘ただいま’を言ったスナは、その笑顔を180度変えてキッと睨む


「余計なコト言いふらしてんじゃないわよー!」

「ギヒヒ、言ったろ?今日から俺の彼女にするって」

「だからギヒヒじゃなあーい!」


二人でギャースカと言い合いをしていると、スナ達を中心にして回りからの視線に囲まれる


「な、なによ?」


みんなの言いたい事は何となく分かるが、一応確認を…


「二人ってそんな関係だったの!?」

「いつの間にデキてんだぁ?」

「仲良いのは知ってたけど」

「ガジル君!おめでとう!」


等と誰が言ったのか分からない声を次々にかけられる
たぶん最後はジュビアだろう…


「俺のだぞ俺の!俺のネコォオオ!!」

「ぎゃぁ〜!?泣きながら抱き付いてくんなー!しかもネコじゃないしー!」


デレッデレのガジルが見られるなんて中々無い機会だろう
面白い程にキャラ崩壊中のガジルに連中は口をあんぐりと開けて見た

仕事から帰って来て早々に思ってもみない展開に出くわしたスナは、内心ドキドキしながらガジルを引き剥がす

さてさて、今後の二人は一体どうなる事やら…


俺のネコは身近に。
(やっと見つけたぜ!俺のネコォオオ!!)
(もうそのセリフ聞き飽きたわ!って、さらに抱き付くなー!)

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